家庭で生活できない子どもが入所する児童養護施設。横浜市は退所者へのアフターケア事業を進めており、今年度は専門員を配置し訪問支援に着手する。退所後の悩みを把握し、具体的な対処や支援の浸透につなげる考えだ。
進学・就職に高い壁
児童養護施設は18歳での退所が原則。多くが高校卒業とともに自立を迫られることになり、精神面や経済面で困難を抱えるケースも少なくない。
横浜市では概ね500人の入所者がおり、18歳未満の家庭復帰等も含め毎年約50人が退所する。厚労省によると高校卒業後の進路は7割が就職で、進学率は2割強に留まるなど一般の進学率7割強に比べて低水準にある。市の調査では、18歳で退所後に就職して正規職に就いた人は45・6%と、全国の高卒者平均76・2%を大幅に下回る。その後の非正規職への転職も多く、20代前半の87・5%は月収が同世代の全国平均を下回るなど経済的余裕がない状況だ。
市ではこうした退所者支援の一手として、居場所づくりや相談事業を担う交流スペース「よこはまPort For」を2012年に開設。同所を運営するNPO法人ブリッジフォースマイルの米澤麻理子さんによると、何らかの課題を抱え頻繁に訪れる利用者が当初より増えているという。20代が中心で、多いのは就労や自立に向けた相談だ。生活保護の申請や借金問題、メンタル不調、仕事が続かず辞めてしまうなど「生きていくことそのものへの困難を抱えている」と米澤さん。1年がかりで就労にこぎつけるケースもあり「長期的な支援が必要」と話す。
定期連絡で悩み把握
市は新たにアウトリーチ型自立支援コーディネーターを配置。退所年数が経つにつれ連絡先や現況の把握が困難になる状況を踏まえ、今年度末の退所者を対象に定期的な連絡、訪問相談を行って困り事をキャッチし、具体的な支援につなげる。米澤さんは「市が一歩踏み込むのは意義があるがSOSを発していない人に関わっていくのは難しく、各所の協力が必要」と指摘。市は「施設や児童相談所と連携して調整していく」としている。
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