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タウンニュース特別企画 地域包括ケアシステムの中で考える「かかりつけ」を選ぶ意味 青葉区医師会×歯科医師会×薬剤師会地域医療を考える座談会
年齢を重ねても住み慣れたまちで暮らしたい。自分らしい生活を最期まで続けたい――。この願いを実現するために、国は「地域包括ケアシステム」と名付け、自治体と共に医療や介護、地域での支え合いなど様々な要素を整備、拡充している。中でも医療に関わる分野は健康寿命を延ばしていく上でも最重要分野だ。今回は本紙特別企画として、青葉区内の医療、健康づくりを担う青葉区医師会(山本俊夫会長)・歯科医師会(下山和夫会長)・薬剤師会(山崎秀之会長)の3人に「地域包括ケアシステム」構築に向けた取り組みを聞いた。 (聞き手/本紙・佐藤信彦)
地域包括ケアシステムとは
―地域包括ケアシステムについて教えて下さい。
医師会・山本会長(以下山本)…青葉区も含め全国で少子高齢化が急速に進み、人口減少社会を迎えます。増加していく医療や介護などの需要に対し、このままでは多くの高齢者が医療難民、介護難民となり、住み慣れた地域で最期を迎えることが困難になるのではないかと懸念されています。だからこそ、いわゆる団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、地域で包括的な支援やサービス提供体制を整えていこうと構築しているのが、「地域包括ケアシステム」になります。
将来的に病院のベッドは不足し、増床するにも限界が出てきます。そうすると長期間の入院が難しくなるため、今後は自宅や高齢者施設で医療や介護を受け、そして看取りまで行うことになります。ですから「在宅」で受けられるサービスを今以上に充実をさせていかなければなりません。医師会・歯科医師会・薬剤師会の三師会としても、自宅や施設に訪問して診療や歯科治療、服薬指導を行うことが今後ますます重要となってきます。
医師会としては江田駅から徒歩4分の青葉区医師会荏田北事業所に「在宅医療連携拠点」(荏田北3の8の6/【電話】045・910・3120)を設け、医療と介護を途切れなくつなぐための連携の拠点としています。例えば病院を退院して在宅でその後を見るために、在宅医療を行う医師への支援や介護を担うケアマネジャーなどに医療的支援を実施しています。
―一方、歯科医師会、薬剤師会の取り組みは。
歯科医師会・下山会長(以下下山)…歯科診療所へ通院が困難な患者さんのために、相談窓口として訪問歯科相談ダイヤル(【携帯電話】070・1540・6296/平日10時〜17時)を開設しています。
特に寝たきりの人は口腔環境を清潔に保たないと誤嚥性肺炎の原因になります。また、介護する人が入れ歯の手入れが分からず使用しないケースも見受けられますが、そうすると食べる機能が衰え、胃ろうや流動食となり、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の著しい低下を招きます。訪問歯科をうまく利用し、口腔ケアをしっかり行うことで元気で長生きすることにつなげてほしいですね。
薬剤師会・山崎会長(以下山崎)…通院が困難な患者さんに対し、薬剤師は医師と連携して正しい服薬方法や薬の管理をアドバイスしています。薬の副作用で眠気や痒みなどの症状が出ることもあるため、生活環境の中で薬の専門家が患者さんの変化を見ていかなければなりません。また、高齢者は薬の種類が多い上、正しい時間の服薬が必要。そこで、いつ、どの薬を飲めばいいか一目で分かる「お薬カレンダー」や余った薬を回収するバッグも用意しています。
健康寿命を延ばす
―「訪問」のほかに考えていることは。
(山本)…健康を維持し、健康寿命を延ばす取り組みです。現在、男女とも平均寿命と健康寿命の差は概ね10年ほどですが、言い換えると、約10年間は「健康ではない」ので、何らかの支援(訪問診療、介護など)が必要な状態ということです。健康維持の手助けができれば、寝たきりにならず、高齢者が生きいきと地域で暮らす一助にもなります。まず手始めに健康診断を1年に1回は受けることです。健康寿命が延びれば医療費や介護費の節約になり、財政が厳しい中、医療や介護保険料の削減にもつながります。
―地域包括ケアシステムについての展望を。
(山本)…取り組みを進めている中で、区民の受け皿として医療を提供できるか、非常に厳しく見ています。具体的には訪問診療ができる医師や歯科医師、薬剤師を確保していくことが一番大変になると思います。また、医療保険や介護保険で何ができるか、など制度自体が一般に知られていません。だからこそ、区民の皆さんには制度などを理解し、また、自分の健康のことを気軽に相談できる「かかりつけ」を持って頂きたいですね。
かかりつけを持つ大切さ
―「かかりつけ」を持つメリットは。
(山本)…医師会としては「健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門の医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師のこと」と定義しています。若いうちはあまり病気にならないかもしれませんが、高齢になってくると疾患も増えてきます。病歴や体質、生活環境まで理解している医師の存在は心強いものになるはずです。「かかりつけ」は1件とは限りません。一般的には内科と思われがちですが、整形外科、耳鼻科、眼科もそれぞれが「かかりつけ」になります。
(下山)…歯の治療履歴は、他の歯科医が見てもその場では分からないことが多くあります。その点、かかりつけ歯科医がいれば治療記録を元に訪問歯科医やケアマネジャーと適切に連携ができるようになるメリットがあります。
(山崎)…高齢になり、合併症が増えると処方される薬も増えていきますが、かかりつけ薬局があれば、お薬手帳(多言語版も有り)を活用して、薬の重複や飲み合わせがチェックできるようになります。かかりつけ薬局を決めて、市販の薬も含め、一元的に薬を管理していくことが大切です。
(山本)地域包括ケアシステムについては、行政の計画の下で、我々医療従事者が運用を担っていかなければなりません。繰り返しになりますが、「かかりつけ」を持って頂き、特に病気を持っていない人も健康診断を行い、そのクリニックをかかりつけ医として、行政サービスや介護分野のサービスを利用し健康寿命を延ばす事に活用をしてもらいたいと思います。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。
区民の命を守る 災害時医療の体制を整備
各種公益事業に取り組んでいる青葉区医師会・歯科医師会・薬剤師会。その中でも災害時の救急医療を担う役割は区民の命を守る最重要のものだ。
震度6弱以上の地震があった場合、三師会等は応急医療を行う地域定点診療拠点を12カ所で開設=左表。加えて医師会は地域防災拠点41カ所を巡回する医療チームを結成して対応する計画だ。
薬剤師会は各診療拠点に必要な医薬品を備蓄。薬剤には使用期限があることから、平時は会員薬局が在庫として持ち、患者に調剤をしながら一定数保有する「循環備蓄」の形をとっている。発災時に会員薬剤師が医薬品を持ち、速やかに各診療拠点へと向かう段取りだ。
一方、歯科医師会は発災直後の活動に加え、避難生活が長期にわたる場合の口腔ケアに力を注ぐ。水不足が予想される中、口の中を清潔に保つことは、免疫力低下を防ぐために重要で、特に高齢者は誤嚥性肺炎の予防につながる大切なポイントだ。
災害時医療について詳細を検討、決定しているのが、三師会や行政、関係団体で構成する災害時地域医療検討委員会だ。
2005年にスタートした同委員会は、災害時の体制が整っていなかった状況に危機感を抱いた当時の医師会長、入戸野(にっとの)博さんが立ち上げ、年に11回開催している。
入戸野さんは「防災への備えは市内18区でも一番進んでいるが、それでもまだまだ道半ば」と話し、区民の命を守るため、今後も体制整備に取り組む考えを示している。
青葉区医師会/青葉区歯科医師会/青葉区薬剤師会
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