横浜市 成年後見制に市民力 今秋モデル事業をスタート
認知症などによって判断力が十分でない人の権利を守る成年後見制度で、横浜市は「市民後見人」の育成を今秋から開始する。従来は弁護士ら専門職の人や法人が受け持ってきた「第三者後見」の「新たな担い手」として注目されている。
横浜市は昨年6月、区社会福祉協議会や専門家から成る検討委員会を設置。高齢化に伴い高齢者をターゲットにした犯罪が社会問題となる中、潜在需要の高まる成年後見制度に市民力を導入する「横浜ならでは」の仕組みを検討してきた。
そこで考え出されたのが、弁護士などの専門職団体や社協、行政等から構成されている市独自の組織『成年後見サポートネット』が培ってきた連携を土台とし、市民を後見人として養成する体制だ。手始めに今秋から市内3区でモデル事業として開始。3区は実現性の高さから選考する方針だ。
研修カリキュラムでは半年間、座学で必要な倫理観や法的知識を学んだ後、1年間実務として被後見人への支援を実習。計1年半の時間をかけて市民後見人に求められる資質・スキルを身につけていく。研修を受けるために必要な資格はなく、一般市民を対象としている。
資産案件は対象外
市が掲げる「市民後見よこはまモデル」では、市民後見人が担当するのは、親族後見が困難で紛争性が少ない案件としている。また、多額の資産がある案件は当面対象外となる。また、弁護士や司法書士ら専門職の後見人と比べ、同じ地域で生活する市民後見人は「時間をかけ、より細かい支援ができる」「地域のことを良く知っている」などの強みがある。「(市民後見人は)財産管理というよりも、その人の生活を豊かにするための介護保険サービスの契約などの身上監護が大きなウエイトを占める」と健康福祉局福祉保健課の深川敦子課長は話す。
重要視される被後見人とのマッチングについては、受任調整会議(仮称)が状況を的確に把握した上でコーディネートするという。
潜在ニーズ10万人
全国の成年後見等の申立件数は2000年の8956件に対し10年には2万9477件と3倍に、逆に90・9%だった親族による後見は58・6%になった。深川課長は「横浜市には、これから成年後見が必要になる人含め、約10万人という潜在的ニーズがあると推定されている」と話している。今後はさらに高齢者が増加し、家族による支援が困難な人が増えると予見されている。
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