鶴見川多目的遊水地 洪水から流域守り 10周年 「安心せず、対策を」
鶴見川の治水を目的に国が2003年6月に設置した「鶴見川多目的遊水地」(小机町・鳥山町)が、運用開始10周年を迎えた。今月15日に記念イベントも行われるなど、遊水地の役割を改めて見直す機運が高まっている。
遊水地は74年、急速な都市化により、人口増加が進行した流域の治水を目的に国が計画を立案、94年から9年をかけて完成させた。同河川と鳥山川が合流する河口から13・8Kmに位置し、日産スタジアムや新横浜公園を含む84haの敷地を有している。
遊水地は平常時、公園などとして親しまれているが、豪雨が降った場合、周囲の堤防より3m低く設置されている、新横浜公園沿いに設置される「越流堤(えっりゅうてい)」から水が流入し、一旦貯溜できるようになっている。川の水位低下が確認できれば、排水門より川へ水を戻す。これにより、水位調節ができ、洪水被害を防ぐことができる仕組み。遊水地内の日産スタジアムや障害者スポーツ文化センター横浜ラポールなどの建造物は高床式構造となっており、河川水が越流しても浸水されないようになっている。
これまでに11回、遊水地に流入しており、近々では今年4月6日、低気圧による豪雨があった際に活用されている。この時は過去2番目に大きい流入量で約92万㎥を貯溜、結果、亀の子橋地点で約60cmの水位低減効果があったと推定されている。
海外からも評価
鶴見川はかつて「暴れ川」と呼ばれ、氾濫を繰り返してきた歴史がある。80代の綱島に住むある男性は「私が10代前半の頃、洪水で軒下まで水がきた家もあったと記憶している」と語る。
そうした経緯を踏まえ、同河川の治水は進み、現在では、アジアを中心に海外からも視察に来るほどにまでなっている。昨年には、発展途上国へ融資なども行う世界銀行が作成した政策立案者向けガイドブックで遊水地が紹介され、評価されたという。
国土交通省の齋田紀行さんは「さまざまな努力もあり、1982年を最後に被害は出ていない」としつつ、「しかし『絶対安全』でないので、対策をとる意識を忘れないで欲しい」と訴えている。
15日(土)午後1時半から4時には、遊水地が果たしてきた役割を共有するイベントが開かれる。先着40人で、要予約・参加費無料。
問合せは鶴見川流域センター【電話】475・1998。
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