先月、「第62回 神奈川文化賞」を受賞した 今井 清一さん 錦が丘在住 89歳
戦争の記憶、伝承願う
○…「89歳という年齢での受賞だったので、驚きました」。日本の近現代政治史と横浜を含む地域史の研究に尽力した功績が評価され、学術分野での受賞となった。「他にも適任者がいるんじゃないかと思ったけれどありがたく受け取りました」と穏やかに微笑む。
○…横浜市立大学で教授を務める傍ら、1970年代から研究者と「横浜の空襲を記録する会」を立ち上げ、参加した市民と共に本をまとめるなど、空襲の記録を紡いできた。全国で同様の行動をする団体間をつなぐ組織でも中心的に活動をしてきた。「70年代から2010年頃まで、彼らとの交流は非常に大切でした」。当時、太平洋戦争から約30年が経ち、米軍の文書公開が始まっていた。研究者として、また自身の戦争経験から「記録を残さなければいけない」と感じたという。
○…東京大学在学中、学徒出陣を受け、陸軍の経理学校へ入隊。空襲には直接遭わなかったが、東京大空襲で親友を失い、横浜大空襲でも別の友人が重傷を負った。身の回りに空襲の被害を受けた人が多かったことも活動の原動力のひとつとなった。その後、大学院へ入学し、近現代史の研究者の道へ。ライフワークとなった空襲関連の会では会合後、仲間たちと酒を交わすことが長年の楽しみ。資料館を作るにはどうしたら良いかなどの課題が飛び出す。「のんべえ友達はいいよね。色々な人の活動が結びつく可能性のある場なんです。飲み会は、活動グループを長期的に存続させる秘訣ですね」と目を細める。
○…今、憲法改正や特定秘密保護法案の動きに、戦前と同じ政治の動きを感じ取る。「日本は各国との講和条約で戦争に対する反省と責任が終わった立場を取っているが、そうは言えないのでは」と語る。「戦場となった地、痛みを与えられる側というのは、ずっと覚えている。日本はしっかりと、戦争の記憶を覚えておかなくてはいけない」と、記憶の伝承を願う。
|
|
|
|
|
|