聴覚障害や発話に困難がある人と、健聴者との電話を通訳オペレーターがつなぐ「電話リレーサービス」が7月から開始される。公的サービスとして総務省が整備し初めて実施されるもの。同サービスの啓発活動を続けてきた樽町のNPO法人インフォメーションギャップバスター(以下、IGB)理事長の伊藤芳浩さんに背景や今後の課題を聞いた。
電話リレーサービスとは、聴覚障害などがある人が電話をかける際、パソコンやスマートフォンを通じて手話やチャットをオペレーターが通訳し、コミュニケーションを取ることができるサービス。これまで民間レベルでのサービスはあったものの、24時間対応ではないために救急車や警察を呼ぶ際の緊急時に速やかな要請ができない等の課題があった。7月からは(一財)日本財団電話リレーサービスがサービス提供機関となり、365日24時間、日常的な発信から緊急通報まで利用できるようになる。
4年前に署名提出
総務省によると、以前からこうしたサービスへの要望はあったというが、議論を加速させる要因の一つとなったのが、IGBによる署名活動だ。IGBは、社会にあるコミュニケーションの障壁を解消することを目的に、自身も生まれつき聴覚障害のある伊藤さんら有志が2010年に設立。14年から同サービスの啓発活動と署名活動を実施し、17年に「24時間365日対応の公的サービス化」を求めて、総務省に8096筆の署名を提出した。
背景には、伊藤さん自身が電話を掛ける際、毎回友人らに頼まなければならず、人間関係が壊れてしまった体験がある。「公のサービスがあれば」。そんな思いを募らせていた頃、民間企業の代理電話サービスや日本財団のモデルプロジェクトが開始され、改めて必要性を実感。署名活動やロビー活動、企業と市民、当事者向けの講演やセミナーを開いてきた。
「当事者やこれまで代理で電話をかけていた家族からの賛同の声や協力も励みになった」と振り返る。
20年には公的サービスとして制度化した法律が成立。7月からの開始を前に、伊藤さんは「電話が誕生してから150年もの年月が経ち、ようやく電話できない不便さや制限が解消される。社会参加が促進され、QOL向上も期待でき大変嬉しい」と喜ぶ。
今後の普及がカギ
一方、これまでもクレジットカードの紛失時に電話が本人でないために利用停止手続きを断られたケース等があったことから、金融機関などとの本人確認に課題が残るという。また、サービスが認知されていないことで、かけた先の人に怪しまれたり、詳しい説明を求められてスムーズに会話できないことも想定される。
「オペレーターを介しての通話なので、多少のタイムラグがあるかもしれないが、かかってきても慌てず普通に対応してほしい」という。
同サービスの利用には登録が必要。現在、アプリでの登録を受け付けており、今後郵送でも登録可能になる予定。システム改修も行われ22日には、登録方法が簡略化された。また、利用者が登録後に付与される電話番号を用いれば、健聴者から利用者に発信することも可能だ。
詳細は(一財)日本財団電話リレーサービスWebページ(【URL】https://nftrs.or.jp/)を参照。
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