発災時における快適なトイレ環境の確保に取り組む横浜市は今年度、自治会・町内会やマンション管理組合などが災害用マンホールトイレ(※)を購入する際の設置助成制度を創設した。8月16日から申請を受け付けている。
横浜市は地域からの要望を受け今年度から、マンホールトイレの設置に対する助成を始めた。対象となるのは、自主的な防災活動を積極的に行う、自治会・町内会やマンション管理組合など。助成金額は設置費用の10分の9以内(上限30万円)。汚水ますの上に設置する便器のほか、設置に必要な排水管の整備なども含まれる。事業予算は約600万円。
大規模災害時、避難所などですぐに必要になるのがトイレ環境の整備。東日本大震災では、通常の仮設トイレが避難所に行き渡るまでに66%の自治体で4日以上を要している。市は自助・共助の観点からも、避難所だけでなく、地域でのマンホールトイレの備えを後押ししたい考えだ。市環境創造局担当者は「申請開始前から問い合わせがとても多い。今年度の状況を踏まえ、次年度はより大きく事業を展開したい」と制度への関心の高さを話す。
一方、マンホールトイレを約5年前に自前で導入した、市内のマンション管理組合理事は「導入時に一度しか組み立ての練習をしていないのが心配」と課題を口にする。市担当者は「いざという時のため、防災訓練などに合わせ1年に1回は組み立ての訓練をしてほしい」と呼び掛ける。
災害時に水洗トイレは使用不可
防災用品や災害用トイレなどを扱っている、新横浜の(株)セットアップ横浜(奈良建設(株)100%子会社)では補助金の新設に伴い、問い合わせが増えているという。同社の防災トイレアドバイザー、山田紀雄さんは「ほとんどの人は、食べ物や水は備蓄していても、災害時のトイレへの備えはあまり考えていない場合が多いが、健康な生活のためにはとても大切なこと」と話す。内閣府の避難所におけるトイレの確保・管理ガイドラインでは、東日本大震災の際の調査で避難所に仮設トイレが設置されたのは、多くが発災から3日以上経ってからだったことから「災害時に断水や排水不可でトイレの水洗は使えなくなる。最低でも洋式便器等に設置して使用する携帯トイレは、ぜひ家族人数分×3日分以上は備えていてほしい」と山田さん。また同社では、災害用の洋式トイレのほかに、男女共用による行列の解消のために男性専用の小便器も取り扱っているという。
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