明日3月11日で東日本大震災から11年。4日から7日には企画展・講演会「福島原発事故10年〜わたしたちは何処に向かうのか?」が新横浜のオルタナティブ生活館で開催された。各地から座談会に参加した東京電力福島第一原発事故の避難者は「原発事故は終わっていない。今も継続している」と訴える。
企画したのは、神奈川県内の避難者とその支援者らからなる福島原発事故10年企画実行委員会。元々、原発事故から10年となる昨年に予定していたが、コロナ禍で2度延期となり今回に至った。
主催者によると「10年が経過し被災者への支援策が打ち切られるなど過去の出来事のようにされているが、今も苦難の日々を送っている人が大勢いる。その現実を知ってもらい、原発・核のない社会を考えたい」と企画したという。
港北区在住の林洋子さんは、4人の同実行委員会事務局メンバーの一人。福島県南相馬市で生まれ、10歳までの幼少期を過ごした経験から、2013年に国と東電を訴えたことで始まった「福島原発かながわ訴訟」の原告団(第1陣/神奈川県内避難者61家族174人)を支援。かながわ訴訟を支援する会の共同代表として発足当初から、県内避難者の声を聞きながら活動を続けてきた。
5日、作家で被災者の声を聞く活動を続ける渡辺一枝さんを交えた座談会には、中学1年生で被災した男性や乳幼児を連れて母子避難した女性など神奈川、京都、佐賀、大阪に避難中の5人が登壇(一部オンライン)。
「まさか11年も子どもが父親と離れ家族離散になるとは想像もしていなかった」「避難先に住む人、福島に戻った人、それぞれに深い悩みがある」といった思いや今も続く健康被害への懸念等が語られた。
5人は各々の地域でほかの避難家族と共に集団訴訟を起こした原告団の代表でもあり、座談会では各地の避難者との連携や、原告だけでなく全ての原発被害者が救済されるよう模索していることなどが語られていた。
避難者、県内に約2千人
福島県庁が復興庁のデータを元に公表している資料によると、神奈川県内にいる福島県からの避難者は現在1798人(2月8日時点)。
同企画の実行委員長で、福島原発かながわ訴訟の原告団団長の村田弘さんは「避難者は避難を続けながら子どもを育て経済的に苦しかったり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で不安を抱えたり明るい見通しが立たない状況が続いている」と話す。
17年に避難指示区域外からの自主避難者への住宅無償提供が終了するなど、年月の経過とともに国や福島県の支援は打ち切られている。村田さんは「これだけの事故で被害を出しているのだから本来は国と東電は責任を認め、健康被害をどう小さくするかや救済を考えるべき」という。「私たちは裁判で理不尽さを訴える手しかない現状がある」として「裁判を通じ日本全体で共有し、社会の在り方を考えるきかっけになれば」と語った。
ロシア政府に要請
また、4日にロシア軍がウクライナのザポリージャ原発を攻撃したとの報道を受け、ロシア軍のウクライナ侵攻に抗議し原発の安全確保を求める声明を会場で公開。戦争により原発事故が起これば、被害が深刻で広範なものになることはチェルノブイリ原発事故とフクシマ原発事故の経験が教えているとして、参加者一同の名で催し後にロシア大使館に届ける予定。
このほか期間中はさまざまな団体による活動紹介やこれまでの原発事故集団訴訟の記録等も展示。大飯原発3号・4号機の運転差し止め判決を下した元裁判官、樋口英明さんの講演会等も行われた。林さんは「若い人から力強い声も聞き、仲間が増え次世代に引き継がれたように感じた。皆で自分のこととして考えるきっかけの場になったと思う」と語った。
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