仲町台に本社を構える放電加工機メーカーの株式会社ソディック(古川健一代表取締役社長)は、本業とは文字通り「畑違い」の業態で、障害者の「働ける環境」を創出している。
市営地下鉄ブルーライン「中川駅」前にあるビルの3階。自動ドアの先、真っ白な壁で覆われたラボ(実験室)のような空間が屋内農園「中川ファーム」だ。
この農園の一角で7月1日から障害のある同社社員6人が、本格稼働前の研修を受けている。
同社人事課長の伊藤修一さんによると、ファーム導入前は、一般事務で障害者を雇用していたが、障害の特性などから難しい人もいた。一方で会社は急成長のため年間100人前後の新規採用を続けており、障害者の法定雇用率を満たすためにも「新たな働く場」を準備する必要があった。
同社は障害のある社員が安心して業務に取り組める環境整備を進めるため、株式会社スタートライン(本社・東京都三鷹市)が展開する屋内農園型障害者雇用支援サービス「IBUKI」を活用。農園での栽培業務という新しい仕事で、障害のある社員に会社を支えてもらうことにした。
屋内農園では障害のある社員が、葉物野菜やハーブなどの栽培・収穫から加工・出荷まですべての業務を行っている。収穫した野菜は同社の社員食堂で提供され=写真=、ハーブはドライ加工やブレンド、パッケージ詰めをして社内のカフェコーナーに置かれるなど社員の福利厚生に活用されている。
同社では2019年に海老名ファーム=海老名市=、22年に新羽ファーム=港北区=を借り受け、障害のある社員を雇用している。中川ファームで研修を受ける障害者の一人は「覚えることは多くて大変だが、植物が育っていくのを見るのは嬉しく、やりがいを感じる」と感想を語った。
伊藤さんは「社員は皆ファームで働く社員に感謝している。今後はファームの見学などの交流もしたい」と語った。
社会的自立の一歩に
ファームで働く障害者は人事部が全面サポート。「他の野菜を育てたい」「花も育てたい」と新しいことへの挑戦に意欲的な社員もおり、伊藤さんは「成長が早く、見ていて幸せな気分になる」と喜ぶ。
一方で「ここをゴールにしてほしくない」とも話す。そのため時には同じ社会人として厳しい言葉でアドバイスを送ることも。「働きやすい環境なので、社会的自立の訓練と捉え、ここをステップにどこでも働けるように活躍してほしい」と親心をのぞかせた。
障害者雇用のノウハウを提供スタートライン社
全国で屋内農園型障害者雇用支援サービスを行うスタートライン社は2009年創業。当初は身体障害者にとって過酷な通勤環境を解決するため、サテライトオフィスを展開。パソコン作業が得意でないなど、事務職以外の障害者の活躍の場として新たに創出したサービスが、屋内型農園「IBUKI」だ。「IBUKI」は現在全国で23カ所展開。220社が利用、1320人の障害者が働いている。同社広報室の藤野祐輝さんは「どの働き方が最良かは手探り。ただ当社が障害者雇用のノウハウを社会に提供し、それを各社が活用することで、障害者の雇用は守られ、良い社会につながる」と展望を語った。
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