横浜市が進めるカジノを含むIR(統合型リゾート)事業。その実施方針公表について林文子市長は、8月19日の会見で延期すると発表した。2020年代後半としている開業時期は「かなり遅れるだろう」と自身の見解も示した。
実施方針とは、IR区域の位置や規模、施設の種類などを示し、事業の応募条件や選定基準も明らかにする重要な計画。当初市は、実施方針を6月公表としていたが、国会議員の汚職事件や新型コロナの影響で国の基本方針が出ず、8月に延期。そして今回、公表時期を示さず再延期に。
その理由は主に2つ。新型コロナ対策への注力とIRに関する国の基本方針が未だ示されていないことだ。
後者については、感染症予防など国の基本方針の追加事項が示されない限り、市の実施方針を公表できないと判断した。
これまで市は、国が定める区域整備計画の申請期間(2021年1月〜7月)に間に合わせるためには、実施方針の8月公表は必須としていた。そのため、再延期は市にとって予想外の措置であり、大きな痛手だ。
市IR推進課は、IRに手を挙げている大阪市や長崎県、和歌山県の延期決定を例にとり環境変化があるとして、国の申請期間について「何らかの動きがあるべきだろう」と本音をもらす。
ただ、市はIR誘致を断念したわけでは、もちろんない。林市長は、コロナ後の経済活性策としてIRの経済効果に期待する姿勢を示した。IRに反対する市議は「市民の反対、国の事業遅れ、コロナ未収束の状況で推進するのは決定的に間違い」と指摘する。
署名活動がスタート
IR実現には市民の理解が必要として、全18区を対象に昨年12月に始まった市の市民説明会は、コロナの影響により6区を残して中止。その状況において、IR誘致の是非を問う住民投票や林市長のリコール(解職請求)の実現に向けた市民団体による署名活動が本格化する。
住民投票を目指す約30団体の共闘組織「カジノの是非を決める横浜市民の会」は9月4日から、解職請求を目指す「一人から始めるリコール運動」は10月開始を予定。
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