センター南駅から徒歩5分ほどのところにあるチョコレート専門店「ショコラ房」=茅ケ崎南=。手作りチョコレートが人気な同店の原点は、障害者が健常者とプロとでコラボして作る全国で最初の「福祉のチョコレート工房」だ。
「ショコラ房」を運営する一般社団法人AOH代表理事の伊藤紀幸さんは元銀行マン。29歳の時に生まれた長男には知的障害があった。
ある日、長男が話す言葉を、妻は100%理解できるのに、自分はできないことに愕然とし、働き方に疑問を持ち始める。それでも養護学校の教員からは「障害者は働けても月給3000円」との現実を知らされ、「我が子のためにお金を残さないと」と仕事にまい進する毎日だった。
そんな時、ヤマト運輸株式会社(現ヤマトホールディングス株式会社)創業者・小倉昌男さんが障害者の低賃金脱却のために立ち上げた「スワンベーカリー」のことを新聞記事で知り、「我が子のために財産を残すだけでよいのか」と自問するようになった。
「障害者の生きる世界を変えたい」
伊藤さんは脱サラし、不動産鑑定士の資格を活かして独立。「何をやってもリスクがあるなら自分の好きなことで」と10年後の2012年に、AOHを設立。福祉作業所としては全国初となるチョコレート工房「ショコラボ」を立ち上げた。
「ショコラボ」は就労移行支援事業所として設立したため、通所は2年間に限られる。伊藤さんは働き続けたい障害者のために、期間の定めがない就労継続支援B型事業所も設立。19年には障害者を雇用し、販売も行う店舗併設工房「ショコラ房」をオープンさせた。
ショコラボではカカオの焙煎や殻剥きなどすべて手作業で、手間はかかるが、味は本格的。その分商品の価格も高価だ。「『福祉作業所の製品だから』『社会貢献で』と買ってもらうだけでは一生働いて生活するための給料を得ることはできない。安売りせず『美味しいから』『人にプレゼントしたいので』と思ってもらいたい」と業務統括部長の川村茜さんは説明する。今ではクリスマス時期から母の日の頃までは特に多くの来店客でにぎわいを見せる。「皆まじめで責任感がある。商品が完売すると喜び、売り上げも気にしている」(川村さん)という。
開設当初は10人に満たなかったが、現在はチョコレート専門店の他、カフェやレストランで約70人ほどの障害者が働く。伊藤さんは「続けることが大事。自分が引退したらお終いでは困る」と障害者の雇用を守る意義を語った。
5周年記念アート展
ショコラ房センター南本店は開店5周年を記念し、7月31日(水)まで店内外を装飾したアート展を実施中。期間中に限定ギフトパック(税込1000円)を購入すると、記念品が当たるくじが引けるなどのイベントも行っている。
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