希望ケ丘駅南口すぐの「カフェ・ピッコロ」=中希望が丘108の28=の2階で、絵本の原画展が開催されている。作品は福島第一原発事故を題材に、自然と人間の共生をテーマにしたもの。作者は善部町に住む牟田茂男さん(73)。東日本大震災から間もなく13年。牟田さんが作品に込めた思いについて話を聞いた。
自然と人間の共生
作品「ビーボとスケル・なかよしツバメ ふくしまをとぶ」は、「ビーボ」と「スケル」の2羽のツバメが、毎春インドネシアから福島の少年のもとへ渡ってくる内容。福島へ渡ってきたツバメは、東日本大震災の影響で、水素爆発を起こした福島第一原発の周りを飛び、被曝してしまう中、ツバメを助けようと奮闘する少年との交流や成長が表現されている。
牟田さんは震災当時、原発事故による放射能汚染から免れるため、福島の人たちがバスで避難する様子を目の当たりにし、「福島には人間の言葉が分からない動物もいる。放射能汚染で自然はどうなる?動物は?」と不安を感じた。
牟田さんは事故に対する憤りや懸念を「自然と人間の共生」をテーマに絵と文章にまとめ、物語を書き上げた。
全てが完成したのは事故からわずか2カ月後の5月。牟田さんは、完成した原画を多くの人に見てもらう可能性を求め、出版社主催の絵本作品賞に応募。しかし採用には至らず、牟田さんも続けて作品を作る事はなく、原画はそのまま終い込み、13年間「存在を忘れていた」という。
「作品出てきた意味ある」
昨年、身体を壊してしまった牟田さん。「終活」のつもりで断捨離を始めた際、当時の作品を発見。牟田さんは、毎日のように通うピッコロのオーナー・村井澄枝さんに何気なく作品を見せた。同店は、牟田さんが毎週水曜日に俳句会を開催したり、往年の「歌声喫茶」のような歌唱会ではギターを弾いたりするなど、常連の「名物客」となっている。
村井さんは「構成がしっかりしていて、ストーリーの面白さに魅かれた。多くの人に見てもらった方がいい」と思い、店内での展示を提案した。同店は2階をギャラリーのようにし、壁面に水彩画や油絵などを飾っていたからだ。
原画は1月24日から文章と一緒に飾られた。作品を見て「涙が出そうになった」と感想を漏らした人もいたという。2月には社会科の授業の一環で、近隣の小学校からも鑑賞に来た。牟田さんは「作品が出てきたのは何か意味があるのでは、と思った」と村井さんの後押しに感謝した。
原画展は3月末まで。「ピッコロ」の営業時間は午前11時から午後5時。なお店舗営業中のため観覧のみの利用は控えてほしいとのこと。日・月定休。
また牟田さんの作品はネットサイト「note」で公開中。検索サイトで「ビーボとスケル」を見ることができる。
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