旭区内を拠点とする創作和太鼓集団「打鼓音」(渡邊晃伸代表)はこのほど、緑公会堂で全国の和太鼓奏者を招いた演奏会「横浜太鼓祭」を行った。同イベントには石川県輪島市を拠点とする「輪島和太鼓 虎之介」指導者の今井昴さん(31)が出演。能登半島地震からの一日も早い復興を願った和太鼓の音が響いた。
和太鼓根付く輪島
輪島市には、県無形民俗文化財の御陣乗(ごじんじょ)太鼓が400年以上続く伝統芸能として残っており、地元の高校に和太鼓部があるなど、和太鼓の文化が根付いている。
「輪島和太鼓 虎之介」はそんな同市で2000年に結成された太鼓チームだ。結成以来、高校3年生までのメンバーが地元の施設での演奏を行うほか、日本各地の大会に出場。複数回の優勝実績を誇っている。
「演奏で恩返しを」
同団体は、今年1月の能登半島地震で被災。練習場所は壊れ、演奏機会も失ってしまった。そこで、20年来の付き合いがあるという打鼓音が、活動支援のための募金を大会などで実施。また応援メッセージが添えられた横断幕も用意し、集めた約30万円の支援金とともに横浜太鼓祭に訪れた今井さんに手渡した。
打鼓音の渡邊代表は「太鼓でつながった長い付き合いで、ライバルのような関係。演奏の場を提供できてよかったし、一日も早い復興を願っている」と話した。今井さんは「自分が太鼓を演奏できるのは色んな人の支援のおかげ。これから自分の演奏で恩返ししていきたい」と感謝の気持ちを述べた。
練習場所が被害
輪島市で生まれ育った今井さん。小学3年生の時から「輪島和太鼓 虎之介」に参加。高校卒業まで同チームで練習を続けた。
その後は地元を離れ、海外での公演に出演するなどさらなる鍛錬を重ねてきた。プロ奏者として活動していた24歳の時、家業のコンビニ経営を手伝うために地元に帰郷。虎之介にOB指導者として戻り、「コンビニと和太鼓の二刀流」の生活を送っていた。
そんな最中に起こった能登半島地震。経営するコンビニは、避難して店を空けている間に空き巣に遭うなどの被害が出た。和太鼓の練習場は山奥にあり、道の崩落により行くことができない状態に。2月末にようやく行くことができたが、建物が壊れていてすぐに練習を再開することはできなかった。
一方で和太鼓に被害はなく、すぐにでも叩ける状態。しかしメンバーの子どもたちやOBの指導者は輪島から避難していた。また今井さんは当初「和太鼓は地震の音に似ていて、叩いていいのだろうか」という躊躇もあったという。
「元気を届けたい」
それでも今井さんは「元気を届けたい」という思いから活動の再開へ動き始める。石川県白山市の楽器店に練習場所を提供してもらい、避難している虎之介のメンバーと練習できるようになった。また輪島市の取り計らいで、7月頃から市の体育館で練習が可能に。
虎之介としても、富山県氷見市など各地での演奏が始動した。今井さん自身も、コンビニの営業を再開し、徐々に元の生活を取り戻しつつある。
今後は、クラウドファンディングで支援を受けながら「復興太鼓」を作る予定。「虎之介のメンバーだけでなく、住民みんなで一緒に叩いて輪島を盛り上げたい」と意気込む。
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