旭区の「左近山アトリエ131110」で1月18日、団地で暮らす人たちの営みを演劇で表現する「演劇版 団地のこえ」が上演された。企画、脚本、演出を行った、劇作家で美術家の私道かぴさん(32)は、「住民たちの生活や歴史を後世に残したい」という思いで、左近山団地の住民に、それぞれが持つ経歴を取材。その話を元に劇を作り上げた。
「団地です!」――。
団地の建物に扮した演者の一声で上演。「団地」のガイダンスから始まり、団地に移住した夫婦の暮らしが、2人の演者によって描かれた。生活スタイルの変化、バス増便を実現するための住民運動、高齢者が集まれるコミュニティカフェの開設など、住民たちの営んできたこれまでの暮らしや活動が1日限りでよみがえった。
私道かぴさんは「取材して伝わってきた左近山の住民たちの前向きな明るさを表現した」と説明する。
また、劇には左近山の要素を取り入れる工夫も凝らした。劇中で使用する自然音は、左近山団地内で収集。団地内にある「とみた洋品店」の靴下を演者の衣装に使用した。
上演会を鑑賞した、左近山在住の40代女性は「左近山の自然な暮らしが伝わってきた。自分のようにここでの生活が心地いいと感じている先達がいることが伝わり、誇らしいと思った」と感想を述べた。
住み込みで取材
私道かぴさんが団地をテーマにした作品を制作したきっかけは、「祖母が団地に住んでいたこともあり、団地に興味があった」ことだった。兵庫県出身で左近山団地は知らなかったというが、取材のために2023年に1カ月ほど住み込み。3歳から99歳まで、約100人の住民から聞き取りを行い、各々のストーリーをテキストとしてまとめた。
テキストはリーフレットとして配布したほか、2024年1月から2月にかけて、抜粋したテキストを左近山アトリエ13110で展示した。
作品は反響を呼び、劇として見たいという声があり今回の上演につながった。私道かぴさんは「住民たちが作り上げてきた文化を形として残すために、力になり続けたい」と今後の表現活動に意欲を見せる。
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