地域のために役立ててほしい―。県営万騎が原団地に住み、一昨年に他界した男性T・Kさん(享年86)の遺言で、地域に心ある遺産が寄付された。3月末、二俣川駅南口の坂道に現れたベンチに、故人の思いが込められている。
二俣川駅南口からこども自然公園に向かって歩く道は、ゆるやかな坂が続いており、休憩できるベンチ設置を求める声がタウンミーティングで上がっていたという。それらを受け、万騎が原連合自治会(佐々木明男会長)では昨年6月に区に要望を出したが、予算の関係で設置には至らなかった。だが昨年10月、とある故人の遺言により、旭区に約280万円が寄付された。「地域のために」とだけ指定された寄付金を受けた旭区は、地域で要望が出ていたベンチ設置費用に充てることを決めた。
約1400万円を寄付
遺産を寄付したKさんは、妻に先立たれ95年から県営万騎が原団地で一人暮らしをしていた。しかし一昨年、肺がんで「余命2〜3ヵ月」と医師から宣告され、同年10月11日に永眠した。
98年からKさんを担当していた、民生委員の寺島津子(なみ こ)さんは「買い物も料理も自分できっちりやる人だった。温和なんだけど、曲がったことが嫌いで一本筋の通った人でした」と振り返る。寺島さんが遺産のことで相談を受けたのは、一昨年の8月30日。Kさんは「いつ召されてもおかしくない状態」であることを打ち明け、「お世話になった地域に遺産を寄付したい」と胸の内を明かしたという。
その後、区内の司法書士が公正証書遺言を作成。旭区以外にも神奈川県や横浜市、市立万騎が原中学校、市立万騎が原小学校、福祉団体にも寄付し、総額で約1400万円の遺産を地域に残した。遺言を作成した司法書士によると、個人が地域に遺産を寄付するのは珍しいケースという。
ベンチは東京ガスライフバル前と保育園夢未来前の2ヵ所にあり、設置後は休憩などに利用されているようだ。「Kさんは道端で会うと、いつも白い歯を見せてニコッと笑顔を見せてくれました。ベンチに座ると、Kさんの顔が浮かんできます」と寺島さん。善意に対し、佐々木会長は「地域に素晴らしい人がいたことを多くの方に知ってもらいたい」と話している。
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