障害者や高齢者、妊婦など周囲の配慮を必要とする人に対し「私は助けることができます」という意志を可視化した「サポートマーク」。柏町在住の池田進さん(53)が、持病から自立神経失調症を患った自らの体験などをきっかけに考案したものだ。池田さんは「誰でも気軽に始められるSDGs活動」として普及活動を続けている。
必要な人に届かない
義足や人工関節などの内部障害や妊娠初期の女性など、外見だけでは周囲に配慮の必要性が判り難い人のための「ヘルプマーク」や「マタニティマーク」。池田さんも、持病からうつ症状を発症していたことからヘルプマークを携行し、就労支援施設に通っていた。しかし「多くの人はマークの意味を知らない」という現実に直面。「外見が健康そうに見え、身体も大きいので、電車やバスなどで席を譲ってもらえるわけもなく、移動時に体にぶつかられることもしばしば。マークを付けていても意味がない」(池田さん)と感じていたという。
ヘルプマークは、2011年の東日本大震災で、障害者などが必要な支援をうまく伝えられなかったことなどを発端に、翌年、人工関節を使用する東京都議が発案。都議会で採択された。同様の取り組みは、神奈川県をはじめ全国に広がっている。
配慮ある行動や支援が必要な人にとって頼みの綱となるマークだが、健常者など「支援できる人」に届かなければ意味がない。「助けが必要な人は『誰に』『どうやって』助けを求めて良いか分からないことが多い。『私は助けられますよ』と目に見える印があれば」。自身の経験などから、池田さんはサポートマークの考案を思いついた
デザインは、赤字に白抜きでハートと十字架が白抜きされた「ヘルプマーク」と似て非なるものを目指した。名称も「ヘルプ」に対して、「サポート」と冠した。2020年6月には特定NPO法人日本サポートマーク普及協会を発足。クラウドファンディングで支援を呼びかけ、マークがデザインされた缶バッジなどを作り、普及活動を始めた。
支援求める"恐怖"知って
「サポートマーク」について池田さんは「身につける人が増えることで、人々が色々なマークのことを知り、社会の中でお互いのマークを確認し、共存できる環境を作ることが目的」と語る。「このような環境が整えば、困ったときに状況を伝えられ、配慮の必要な人が誰に声をかければ良いか判るようになる」と今後の目標を語った。
ピザハット全店でロンブー淳さんも
池田さんは投薬のおかげなどもあり、うつ症状が改善されてきているとはいえ、協会の活動はSNSが中心。広報手段が限られる中、協会発足後、活動に賛同し、バッジやステッカーなどのサポートマークを手にする賛助会員(1口500円)は年間7、800人程だった。
しかし、ひょんなところから認知度が拡大する。
昨秋、歌手の椎名林檎さんがリリースした新作アルバムの付属グッズがヘルプマークに酷似したデザインだったとして騒動に。その直後、タレントの「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんが、自らのSNSでサポートマークを紹介。自ら着用していることを発信すると、称賛の声と共にマークの認知度が一気に高まった。「賛助会員が倍増した」と池田さんはその影響力に驚いた。
今年2月には、日本ピザハット株式会社が協会の活動に賛同。連携を発表した。同社では全国520店舗で「サポートマーク」を店頭に掲げている。池田さんは「支援を求められる安心感に加え、同社の社員が家族や知人にマークや連携のことを話してくれれば」と波及効果に期待する。
また活動を知った団体などから、オンラインやリアルとのハイブリッドなどでの講演活動も増えているという。「聴講者の中には『そんなマークがなくても席を譲る』という人がいる。そういう人はぜひ、率先して優先席に座り、譲ってほしい。支援が必要な人は、困っていても恐怖で『助けて』と声をあげづらい。外見で判断がつかなければ尚更」とマーク着用の意義を話す。
中小企業・個人が取り組めるSDGs
池田さんは、協会の活動はSDGsに通づるとしてY-SDGsに申請。厳しい審査をクリアし、認証を受けた。また今年4月には横浜商工会議所に入会。企業にサポートマーク普及への協力を呼びかけている。「企業として実効的にSDGsに取り組んでいるのは約3割と言われており、中小企業や個人では『何に取り組んで良いのかわからない』という企業も多い。サポートマークをつけるだけでSDGsの3(すべての人に健康と福祉を)や10(人や国の不平等をなくそう)に取り組んでいることにつながる」(池田さん)。
サポートマークに関する問合せは同協会・池田理事長【携帯電話】070・8449・8123またはホームページ(https://supportmark.or.jp)から。
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