区内若葉台在住で左半身にマヒを抱える櫻田新児さん(68)が、10月23・24日に開催された「第28回日本障害者オープンゴルフ選手権(主催/NPO法人日本障害者ゴルフ協会(DGA))の片マヒの部門で初優勝を飾った。2日続けて自己ベストを更新しての優勝に「メンバーに恵まれ、リラックスして臨めたのが良かった」と周囲に感謝した。
千葉県君津市で開催された大会は、誰もがゴルフを楽しめる環境づくりを目指すDGAが毎年秋に行っている同会最大の大会。障害などに応じて8つの部門に分かれる。片マヒの部は櫻田さんを含め全国から11人が出場。優勝を争った。
櫻田さんは初日に今年8月に出した自己ベストスコアの94を上回る93を記録。2日目にはさらに自己ベストを更新する89を出し、見事優勝を果たした。櫻田さんは「2日目の1番ホールでグリーン外からのアプローチショットがそのままカップインしてパーがとれ、今日はついているなと思った」と勝因を振り返った。
「とてもゴルフは…」
櫻田さんは2018年に脳の奥の細い血管が詰まってしまう「ラクナ梗塞」を発症した。「夜中、トイレに行こうと布団から立ち上がろうとしたら、左足が動かずに倒れた。最初は夢か現実か理解できなかった」と振り返る。家族の助けを借りて、急いで病院へ。約半年間の入院とリハビリのおかげで無事退院したものの、現在も左半身にマヒが残っている。
ゴルフは20代後半の頃から続けていた。しかし、倒れた当時は左手が動かず、歩行も困難なため、「とてもゴルフをやりたいという気持ちにはなれなかった」という。ただ担当の理学療法士から「リハビリを続ければゴルフもできるようになりますよ」と励まされ、意欲が湧いた。さらにサラリーマン時代の同期の誘いや地元・若葉台に新しくオープンした屋内練習場の存在などが背中を押した。DGAの存在を知ると、都内での月1回の練習会にも参加するようになった。マヒが残る左手は力が入らないため、ゴルフクラブのグリップに手のひらを当て、その上から締め付ける力をダイヤルで調整できるサポーターで固定するなど工夫を凝らした。
練習の甲斐もあり、昨年の選手権に初出場すると5位に入賞。今年5月の日本片マヒ障害オープンゴルフ選手権では3位に入るなど、着実に力をつけ、今回の優勝に結びつけた。
人生百年時代を体現
自動車部品メーカーの人事や教育部門に約40年間務め、子会社の役員にまで上り詰めた櫻田さん。還暦を過ぎてから、社会人大学院に入学するなど、第2の人生を意欲的に踏みだした矢先の病気だった。「地獄だった」と当時を振り返るが、退院後に修士論文を書き上げ、翌春無事に卒業。現在は大学院の恩師と転職や就職に関する相談にのる「キャリアカウンセリング」に関する講座を開講している。また脳梗塞で倒れた後に初めて挑戦したスポーツ吹き矢ではいきなり全国大会優勝。趣味だったギターは、片手で演奏できるブルースハープに持ち替え、レッスンを受けるなど、好奇心が衰えることはない。
現在は、来春の出版を目標に自身の半生をまとめた書籍の原稿を執筆中。仮タイトルは「人生百年時代の現実」。現実はまだまだ加筆が必要なほど、充実している。
旭区・瀬谷区版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|
|
<PR>