瀬谷区 社会
公開日:2023.08.31
地域住民による手記
震災の記憶、後世に
瀬谷図書館に所蔵
1923年9月1日に発生した関東大震災における地域の惨状や混迷ぶりを克明に伝えた一冊の本がある。地域住民の仙田雷助さんによる「大正大震災」(29年出版)という手記だ。
「吾が後代の者達に此の大正の地震の惨烈なる眞相を傳へ 並に日常に於ける油断を戒め 之れが心構へを忘れざる事を告げて置きたい一念からであった」。手記の自序で仙田さんは筆を取った理由をこう記す。地震に関する「常識覚悟」があったならば、「勇敢に敏速に避難救出等の動作が出来た事だったと思はれる」という想いも書かれている。
手記は25年に書かれたもので、90ページ超にも及ぶ。「突如ヅシーンと云ふ凄い音響と共に身辺の物が破れ裂ける音 落ちる音 之等が錯雑して…」という発災直後の混乱に始まり、勢至堂脇の分校に通う子どもを迎えに行く途中で倒壊した家から近隣住民を助け出したこと、遠方に見える入道雲が大火災の煙だったことなどが、ありありと描かれている。
2日以降の様子も克明に描写。余震に襲われて救助・復旧活動がままならないこと。朝鮮人が暴動を起こしたなどという流言が飛び交い地域住民らが恐慌状態に陥った様子などが記されている。仙田さんは9月中旬以降に自転車で横浜市街や鎌倉方面などに足を運んでいたようで、横浜地方裁判所の前に位牌や白骨が置かれていたこと、鎌倉周辺の寺社仏閣の倒壊状況など各地の様子を窺い知ることも出来る。
手記は瀬谷図書館に所蔵されており、館内閲覧のみ可能だ。
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