ワレモコウ文:山村卓也(瀬谷環境ネット) 写真:中村多加夫(同) 瀬谷の生き物だより165
十数年前に作詞家杉本真人が、「吾亦紅」(ワレモコウ)を自ら歌い、NHK紅白に初出場した。地道に生きた母に捧げる歌詞が多くの人の心を掴んだのだろう。
ワレモコウは、山野の草原に8月〜10月に咲くバラ科の多年草である。暗赤紫色の小さな花が集まって1〜2cmの円柱状の花穂を先端に付ける。それぞれの花は花弁が無く4枚の萼(がく)片からなり、この萼片が上から下へと開いてゆく。草丈は1m近くまで伸び、風に揺れる姿は風情がある。
自分も赤い花だという意味で「吾亦紅」と書くが、暗赤紫色の花はやはり地味で、秋の七草には入らなかった。
暗赤紫色の花穂は長く残るので、ワレモコウはドライフラワーの花材にもなる。
葉は互生する奇数羽状複葉であり、その小葉の鋸歯から滲んだ無数の水滴が朝日に光る様は大変美しい。
ワレモコウは「源氏物語」をはじめ、詩歌や俳句にも数多く詠われてきた。野趣豊かなワレモコウを探しに、秋の野山を歩いてはどうだろうか。
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