クロヤツシロラン文:山村卓也(瀬谷環境ネット)写真:中村多加夫(同) 瀬谷の生き物だより 167
4年前に狢窪公園で珍しい植物と出会った。ラン科オニノヤガラ属のクロヤツシロランである。熊本県八代で発見されたので「ヤツシロ」の名前が入っているが、関東以西から四国九州まで分布している。
クロヤツシロランは光合成を止めて、地中のキノコ類(クヌギタケ科やホウライタケ科)から栄養分を吸収するように進化した「菌従属栄養植物」である。そのため養分を作る葉は持たず、花と種をつける短期間だけ地上に現れる。
1cmの花は地味な黒褐色で、9月から10月に竹林や杉林の地上ギリギリに咲く。林床は暗いので、通常の受粉者であるハチやチョウは飛来せず、腐ったキノコの匂いを出してショウジョウバエを呼び寄せている。
3週間ほどして種が熟すと、30〜40cmに伸びてとてもよく目立つ。先端の果実はボンボリのような形に6裂して、ラン科特有の微細な種を風で散布する。
瀬谷市民の森やこども自然公園でも、クロヤツシロランの目立つ果実は見られるが、開花中の花を発見することは非常に困難である。
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