出張型の日本酒ソムリエ(唎酒師(ききさけし))として働く磯野カオリさん(44)=和泉中央南在住。各地の飲食店には毎週のように、時には商業施設や法人パーティーなどにも出向き、日本酒の知識と魅力を伝えている。
日本酒ブームとも言われる昨今だが、「ブームで終わらせたくない。そもそも日本のお酒なのにブームと言われる状態なのは残念」と磯野さん。日々の食卓に日本酒が自然と並ぶような「日本酒がある暮らし」を目指し、2年前「横浜桜酒亭」の名で起業。出張講座や蔵元見学ツアーの開催、イベントへの出演などで日本酒の魅力を伝えている。
店を持たずに「出張」の形をとったのは、子育て中であることと、費用面でのリスクが高いから。だが、出張に限定したことでさまざまな依頼に応じることができるなど、利点も大きかった。店を持たない分、店代わりのホームページには力を入れている。依頼の受付だけでなく、日本酒や作家とコラボした和小物の通信販売も行っている。
多方面から依頼が舞い込む磯野さんの魅力の一つは分かりやすく優しい語り口。「ワインと同じように日本酒も料理に合わせて選んでほしい。フルーティーでさっぱりした冷酒は、冷たいマリネに。出汁のきいたおでんには、コクのある熱燗が合います」とにっこり。大学と外資系企業で磨いた英語力で外国人との会話も難なくこなすため、大手企業からのパーティー出演依頼も複数受けている。
若いころは今と逆で、日本酒が苦手だった磯野さん。初めて飲んだものが悪かったのか、日本酒は頭が痛くなる、気持ち悪くなると避けていたという。だが社会人になり、上司に勧められて飲んだ山形県の「出羽桜」によって世界が変わった。「今までのお酒は何だったんだろう」と一気に日本酒に惚れ込み、仕事の後、地酒専門の居酒屋でアルバイトを開始。料理や好みに合わせた選酒の力と知識を身に付けたという。
結婚をしてからは子育てと家事をこなす毎日。じっとしていることが嫌だと思うこともあった。そんな中、2011年、東日本大震災が発生。「いつ何が起こるかわからない。好きなことで輝きたい」という強い思いがふつふつと湧きあがってきた。次男が10歳になったら起業しようと決め、その年に日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会認定唎酒師(ききさけし)の資格を取得。以前から気になっていた男女共同参画センター横浜の起業セミナーでノウハウを学び、卒業した翌月、14年4月に早速起業した。仕事の時はいつも着物姿。「日本酒にはやっぱり着物」と仲間に教わり、着付けにも挑戦しているという。
今後やってみたいのは、酒販店や居酒屋を対象としたコンサルティングだ。「お客さんへの勧め方や売り場づくりなどを伝えていけたら」と意気込む。
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