タウンニュースでは新年の特別企画として、昨年8月に第169回「芥川龍之介賞」を受賞した大和市内在住の作家・市川沙央さん(43)にインタビューを行った。取材はメールで行い、市川さんから文書で回答を得た。回答はすべて原文のまま掲載する。
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市川さんは1979年大和市生まれ。難病の一つで筋疾患の「先天性ミオパチー」により、人工呼吸器と電動車椅子で生活を送っている。
昨年、重度の障がいのある女性を描いた作品「ハンチバック」(文藝春秋)で、第128回文學界新人賞と第169回芥川賞を受賞し、脚光を浴びた。
――受賞の知らせを受けた時から現在まで、環境や立場など大きな変化があったと思います。その中で、自身の内面に何か変化はありましたか。
「自分自身は何も変わっていないのですが、テレビや雑誌や配信イベントに出演させていただくなど表に出ている自分と、何も変わらない自分との間にギャップがあって、あれは誰なんだろうと思っています。芥川賞をいただいて、もう少し小説に自信を持てるようになるかと思いましたが、結局いまも小説を書くのに四苦八苦、七顛八倒しています」
――芥川賞の受賞式で「怒りの作家から愛の作家に」と話していました。市川さんの思う「愛の作家」とは、どのような存在ですか。
「『ハンチバック』のように夢のない作品を書いておいて矛盾しますが、私はもともとハッピーエンドが好きで、エンタメ作家を目指していた頃はハッピーエンドの物語ばかりを書いていました。純文学の芸術性とハッピーエンドはなかなか両立が難しいものなのですが、挑戦をつづけて芸術的な至高のハッピーエンドを書ける作家になりたいと思っています」
思い出深い引地台公園
――作品を生み出す立場として、影響を受けた他作品(小説に限らず)はありますか。
「近年だと漫画の『進撃の巨人』ですかね。百年に一度の作品と言えるくらいのスケールと完成度にひれ伏しました。他にもリスペクトしてきた作品はたくさんありますが、神奈川県出身在住なので、神奈川県を舞台とする映画の一つとして黒澤明の『天国と地獄』を挙げたいと思います。社会の格差、弱者の屈折に注目する視点に影響を受けています」
――最近あった個人的なニュースは何ですか。
「最近初めてUber Eatsを利用したら、とても便利でした」
――大和市で好きな場所はありますか。
「引地台中学の出身なので、隣接する引地台公園が思い出深いですね。人工川のまわりでよく課外授業がありました。大和市民まつりのときは、公園の周りに屋台がずらーっと並んで、綿あめやチョコバナナ、スーパーボール掬いや射的を遊ぶのがとても楽しみでした。大学で学芸員の勉強をしていたことから、つる舞の里歴史資料館もお気に入りです」
――タウンニュースは以前からご覧になっていましたか。
「父が愛読しています。このインタビューも父のたっての希望で(笑)お引き受けしました。私はというと昔よく『リベルタ』紙のほうを読んでました……。うちは代々みな神奈川県出身在住なので、地元紙に取り上げていただいて嬉しいです。東京や全国紙・誌の仕事は多いんですが、なぜか県内の新聞等からの取材はないんです。芥川賞を獲ると知事から表彰される県もありますが神奈川県はそういうの何もないからでしょうか? 神奈川に人一倍ゆかりがあると自負しているんですけど!」
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