小雀町在住の小林順子さん(50)は、最重度知的障害がある長男・将(じょう)さん(19)を育てるなか、同じ特別支援学校に通学していた同級生の保護者とフラダンスサークルを立ち上げ、現在、高齢者施設などで披露し、好評を得ている。幾多の苦難を乗り越えてきた小林さんは「いま、充実している」と笑顔だ。
小林さんは、将さんが2歳の頃に障害を疑うようになった。「言葉が遅く、壁に向かって一人手を叩き続けていて」。病院巡りをしたものの、はっきりしたことは分からず、3歳のとき、ようやく原因不明の先天性脳障害と自閉症との診断が下りる。「病名が分かって正直ほっとしました」。しかし同時に医師からは、生涯おむつが必要となり、しゃべることはできない--との”宣告”を受けた。「その瞬間私の中で『小林順子』は終わり、『小林将の母』になりました」。夫、実家、周囲の協力を得ながら子育てに奔走する日々が始まる。
小学校からは本郷特別支援学校(栄区)に入学。小林さんが特に力を入れたのが、トイレトレーニングだった。しかし何度も壁にぶつかり「時には一緒に死んでしまえたら」と考えることも。転機を迎えたのが14歳の頃。ベテラン教師の熱心な指導で三輪自転車に乗れるようになったとき、身心ともに一気に成長し、トイレをできるようになったという。
乳がんきっかけに
4年前、小林さんに新たな試練が待ち受けていた。胸のしこりの検査を受けたところ、ステージ3の乳がんに罹患していることがわかる。激しい副作用に苦しみながら抗がん剤を続け、左胸の全摘手術を受ける。現在も通院しているが、再発などは起きていないという。
そんな中、小林さんに大きな心境の変化が起こる。「死と向き合う中で『小林順子』を取り戻そうと思ったんです」。医師からリハビリを兼ねた運動を勧められ、興味を持ったのがフラダンスだった。華やかな女性らしい服装、優しい音楽……。どれも魅力的に見えた。一念発起し、講師の資格を取得。折しも将さんが支援学校を卒業する時期となり、これまで親交を温めてきたクラスメイトの保護者12人と「ジュンコフラサークル」を昨年結成。さらに現在将さんが通う作業所の保護者ともフラサークルを立ち上げ、ともに月2回の練習、障害者施設などで披露を続けている。小林さんは「障害児を育てる保護者の方は自分の時間を持つことに罪悪感がある。でも、リフレッシュできる場を持つことはとても大切。これからもフラを通じて自分たち自身、周囲の方に元気をプレゼントしていきたい。将も喜んでくれています」と目じりを下げた。
![]() フラサークルのメンバーとその家族ら
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