戸塚町在住の吉田和臣さん(73)は、脳梗塞に伴う左半身まひなどの障害をものともせず合気道の稽古に励んでいる。7年前の発症後「再び道場に」という一心で厳しいリハビリを経て稽古に復帰。現在、11月24日(日)に行われる「武道祭」に向け、練習を重ねている。
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対面した相手の息遣いを読み取り、呼吸を合わせて手を巧みに使い、相手を崩して投げる。ハンディを感じさせない大技だ。現在、大船にある道場へ月2回ほど通い、技術を磨き続けている。
7段昇格後、悲劇襲う
合気道を始めたのは大学生の頃。たまたまキャンパス内で行われた師範数人による講習会に参加したことがはじまりだ。優劣を競わず相手と調和し、心身ともに鍛えることができる奥深さに魅了され、のめりこんだ。社会人になってからも朝と晩の稽古は欠かさず行い、その甲斐あって7段にまでの登りつめた。「疲れていても稽古をするだけで元気に。生活する上で欠かせない習慣になっていました」
そんななか、突如脳梗塞が吉田さんを襲う。2012年、66歳の頃だった。後遺症として左半身のまひや失語症などを負い、車いすの生活を余儀なくされた。医師からは「生涯寝たきりかも」という言葉も。その状況に打ち勝とうと必死に治療やリハビリを続け、半年後には退院。だが、大好きな合気道とは一度離れることになった。
「昔の感覚」取り戻す
失意に暮れた吉田さんの背中を押したのは、妻の真由美さんだった。たまたま、スポーツセンターの前で見つけた武道のイベント「とつか武道フェスティバル」のチラシを見たことがきっかけだ。「見るだけでも良いから気分転換に行ってみよう」と誘われ、足を運んだ。そこで実際の演武を目にすると、「やっぱり稽古がしたい」という思いがふつふつと沸き上がったという。
一念発起した吉田さんは思い切って道場の門をくぐった。それに合わせてリハビリも難易度を上げ、車いすから立ち上がるための訓練や屈伸のほか、歩行の練習も取り入れて合気道に必要な筋力をつけていった。「徐々に”昔の感覚”を思い出すのか、技を再現しようとする姿も。当初は座ったままだったが、立って稽古できることも多くなった」と真由美さん。道場の仲間からのサポートも得ながら厳しい稽古を重ね、昨年の春には再起のきっかけとなった武道フェスに出演を果たした。現在は24日に県民ホールで行われる「武道祭」での演武に向け、稽古に励んでいる。
吉田さんは「今まで支えてくれた人のために精一杯やり遂げる。いつか有段者の証である袴を着て、自在に稽古に臨みたい」と笑顔を見せた。
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