矢部町在住の小説家・照井裕さん(57)が、四半世紀もの沖縄在住経験をもとに、沖縄の歴史や戦争などを描く長編小説を出版した。「本土から不当な扱いを受け、今後もさまざまな犠牲を強いられる沖縄への正しい理解を促したい」と照井さんは語る。
沖縄タイムス社発刊の『復国の大地』。海外(南米ボリビアがモデル)へ移住した沖縄県人の主人公が、東京に住む小学6年生の曾孫に向けて、自らの一族と沖縄の歴史を、手紙を通じて語る書簡体小説だ。
主人公の祖先が沖縄県へと移住してきた経緯、本土から理不尽な扱いを受けてきた長い歴史、多数の県民が命を落とした沖縄戦などが丁寧に描かれる。また、歴史的事実を誤解なく正確に記すための文章注記が609と膨大な数になるのも特徴だ。照井さんは「沖縄への虐待の歴史は江戸時代までさかのぼります。今後も続くであろうこの問題は私たち本土の問題でもあることを知ってほしい」と話す。
帰郷を機に構想
矢部町生まれの照井さん。東戸塚小学校、舞岡中学校を経て、大学進学を機に沖縄県に移住。作家志望で、在学中に同県の小説家の登竜門として有名な「新沖縄文学賞」を受賞している。
その後は沖縄移民が多く住むボリビアでの農業団体勤務などを経て帰国、ふたたび沖縄へ。出版社に勤務しながら2008年に小説『さまよえる沖縄人』も出版した。
転機は08年、44歳のとき。戸塚に残してきた老父母のことを考え、一大決心して家族とともに帰郷した。里帰り後、強く感じたのが本土の人たちの沖縄への無関心と無理解だった。「ただの観光地」としてしか考えていない人に触れるたび「沖縄の友人たちの顔が浮かんだ」と照井さん。今回の本はそうした現状に対する問題提起として構想し、およそ10年前から書き始めた力作だ。
小説は全387頁。今回の本は第1部で、全4部作、2部は来年夏に出版予定。amazonで購入可能だ。(問)沖縄タイムス社出版部【電話】098・860・3591
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