静岡県の保育園などで園児への虐待事件が明らかになったことを受け、国が全国の自治体に対し、不適切な保育の実態について調査する方針を示した。横浜市は以前から保育施設の責任者向け講習会を開くなど、不適切な保育を防ぐ取組を進めており、施設関係者からは評価する声も聞かれる。
不適切な保育とは、保育所での子どもへのかかわりのうち子どもの人権・人格の尊重の観点から改善を要すると判断されるものを指す。「罰を与える・乱暴な関わり」「脅迫的な言葉がけ」などがこれに当たるとされている。
各地の保育施設で園児に対する虐待や暴言が発覚。こうした事態を受け国は昨年12月、保育所などの実態や不適切な保育への各自治体の対応を把握するための調査を今後行うことを通知した。
認知は約30件
横浜市内にある認可保育所などの保育施設は2022年4月時点で1546カ所にのぼる。22年に市が認知した不適切な保育の疑いがある行為は、保育士が強い口調で園児を叱責したことなど約30件。主に施設関係者や園児の保護者からの報告だったという。
市では不適切な保育の未然防止策として、全国保育士会が保育の質の向上を目的に作った資料をもとに、「よりよい保育のためのチェックリスト」を発行。保育者の主体が子どもであることを強調し、子どもの人格を尊重した指導法やアドバイスが記されている。チェックリストは市内の保育施設のほか、幼稚園にも配布している。
また18年度からは保育施設の施設長を対象とした「組織マネジメント等講習」を実施している。リスクマネジメントを専門とする有識者を講師に招き、園児の事故予防などの安全対策を学んでいる。講習では保護者対応などを参加者同士で話し合うほか、人材育成を目的としたロールプレイングも行う。
横浜、川崎の96の私立保育園が加盟する日本保育協会横浜支部は「市の取組が日ごろの保育を見直すきっかけになる」と評価している。
仕事相談窓口も
市は昨年6月、保育士が仕事の悩みなどを社会保険労務士らに相談できる窓口を設けた。保育士の労働環境の改善に一役買っており、仕事のストレスによる不適切な保育のリスクを減らすことが期待できるという。
不適切な保育の実態調査について、市は「国から詳細な通知があった際に迅速に対応できるようにしたい」としている。
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