第86話 山岳信仰碑その3〜大山不動と石尊大権現〜 とつか歴史探訪
丹沢の大山は関東各地から美しい山容が眺められ、古くから霊山として信仰されてきました。頂上の阿夫利(あふり)神社は雨降神社とも書き、雨乞いの神として農民の信仰もありました。山頂の巨岩を神体とした「石尊(せきそん)大権現」の信仰もあり、天狗信仰も盛んでした。下社から少し下ったところに奈良東大寺開山での良弁が開いたと伝える大山寺があり、珍しい鉄造の不動明王が祀られています。
江戸時代には参拝の団体「大山講」が各地に1万5千余もあり、参詣のためいく筋もの「大山道」がありました。
戸塚の不動坂信号付近には「柏尾通り大山道」への分岐がありました。現在「大山前不動」の堂中に不動明王像が祀られていて、台座に「是より大山道」と刻まれています。堂の周りにも2基の道標があるほか、多くの石造物が並んでいます。遠く松戸の講中が寄進した灯篭もあります。
区内の大山道としてほかに大橋付近で分岐する「吉田道」、矢沢で分岐する「戸塚道」などがありました。広重の「東海道五拾三次之内・戸塚」に描かれた茶屋には「大山講中」の札がかかっています。矢部町には大山阿夫利神社を勧請した小詞があります。また谷矢部池公園脇には道標を兼ねた道祖神があります。元原宿交差点にあった出羽三山碑(現在原宿町第2歩道橋下にある)に「西大山道」の文字があり、ここからも大山へ向かう道があったことが分かります。汲沢の中村三叉路付近には「大山不動尊」の小堂があります。
東海道の戸塚宿が大山参詣の道筋としてもにぎわったことが分かります。
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