名著「スローカーブを、もう一球」にも登場する、スカッシュ競技をけん引、普及し続けてきた 坂本 聖二さん 名瀬町在住 77歳
スカッシュに命 注入
○…スポーツ・ノンフィクションライターとして活躍した故・山際淳司の「スローカーブを、もう一球」。江夏豊氏を題材にした「江夏の21球」収録で知られる、全8編から成る名著だ。なかの1編「ジムナジウムのスーパーマン」は、スカッシュ日本チャンピオンとして9連覇、149連勝を続けていた、当時35歳だった氏の軌跡、心情を描いたもの。「SNSで本が話題にされるのを知るまで、半分忘れていた。でも嬉しいね」
○…山際氏から数回にわたり1対1で取材を受けた。深く深く、心の中に入り込んできたという。「真摯な姿勢に感動した」。初出は月間小説誌。人生の機微を切り取った良質な短編小説の味わいを持つ。それだけに95年、46歳の早すぎる逝去は惜しまれる。続編の計画もあったとされ、「偲ぶ会にも列席しました。残念でならない」と声を落とす。
○…磯子区生まれ。中学時代は「ワル」だった。高校から始めたバドミントンで才能を開花させ、「日本一になる」を目標に大学時代も熱中。卒業後、自動車販売会社に営業職で入社。練習時間を確保するため、勤務内にいかに数多く車を売るかの知略を練った。国体にも出場。「絶対優勝できる」と挑んだが、まさかの準優勝に。「その場に泣き崩れたのは、脳裏に焼き付いているよ」
○…この時期、膝を故障し、リハビリ中に偶然スカッシュに出会う。来日中の海外コーチに打ちのめされ、逆に「極めてやろう」と決意、命を注ぎ込んでいく。黎明期の競技をけん引し、その名を刻み込む。教え子の多くは日本のトップ選手へ。11月16日から開かれた全日本選手権大会のover70でまたも優勝。「オリンピック競技に選ばれた。辞めないよ」。満面の笑みを見せた。
|
<PR>
|
|
|
|
|
|