上矢部町にある松尾神社、篠塚八幡社、坂本第六社がそれぞれ所有する3つの本殿が同年同月同日に再建造営されたことがわかり、市の文化財に指定された。市歴史博物館(都筑区)では2月3日(土)から、今年度指定・登録された市文化財の企画展を開催予定だ。
文化財に指定された理由は、再建造営時の記録が明確に残されており、横浜市の近世後期寺社造営を伝える存在として貴重である点。
さらに指定にあたっての調査で、3つの本殿が多数の共通点を持つことも明らかになった。▽1800年の再建造営決定日から、1807年の完成日までが同年同月同日であること▽鎌倉にある建長寺法堂の造営に携わった、河内長左衛門智英が棟梁を務めたこと▽いずれの本殿再建造営にも同じ宮大工、彫工が関与したこと。
保存状態も良好
また、本殿はいずれも「覆(おおい)屋(や)」と呼ばれる雨風を避けるための建造物に納められており、細かな装飾や彫刻、屋根部分が原型を留めているものが多いことももう一つの理由。とくに松尾神社の本殿は、杮(こけら)葺(ぶき)の屋根の保存状態がよいことが際立っている。3つのうち最も規模が大きく、装飾も豊かだという。
これとは別に、篠塚八幡社の本殿は、造営の年月や由緒、建築者などを記した「棟札(むなふだ)」が確認されている。松尾神社の棟札では省略されている地域の造営関係者が、明確に記されている点も評価された。
坂本第六社の本殿は、建築形式や装飾部分については、篠塚八幡社とほとんど同じだが、彫物部分に彩色された痕跡を留めるものが多いことが特徴だという。
指定の経緯は約3年前、同日再建造営の記録や繊細な彫刻が残されていることなどを改めて専門家に精査してもらいたいと、松尾・篠塚八幡両社を管理している宗教法人が文化財指定を市に申請、調査が開始された。共通点が多数あることがわかった坂本第六社でも、昨秋から調査を実施。今回の指定に至った。
松尾神社の管理者の一人は「今回を機に地域の誇りとなればうれしい。希望者に公開する機会も準備したい」と今後について語った。坂本第六社の管理者は「歴史あるものとして認められて喜ばしい。地域のためにも長く残していきたい」と笑顔で話した。
いずれの本殿も通常は公開されていない。市教育委員会は1月26日(金)まで、市文化財の保存・活用に関する現状整理や取り組みを可視化するため、市民からの意見を募集中。詳細は市HP「横浜市文化財保存活用地域計画(素案)の意見募集について」を参照。
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