当時の社会知る一歩
弥生時代の人たちの稲作はどんなものだったか――。舞岡公園内の宮田保護区で5月17日、弥生時代の稲作方法に関する研究として田植えが行われた。全国10カ所ほどで行われている研究で、山形大学学術研究院准教授の白石哲也さん(泉区出身)は「稲作を再現するという今までにない試みで、当時の社会についても資料になる」と話す。
この研究は全国の大学関係者によるプロジェクト。事務局を務める白石さんの研究グループのほか、市の南部公園緑地事務所や横浜市歴史博物館の職員、公園管理に日頃から携わるNPOメンバーも協力している。
昨年にため池や田んぼづくりを実施して準備し、この日ついに田植えまで行われた。植えられたのは7世紀ごろに存在した可能性のある古代米2種。また農具も弥生時代のものを再現した木製の物と、古墳時代の農具を再現した物(金属を一部使用している)を使って比較しながら行われた。定説では農具の変化により生産性が向上したとされるが、これまで実証的に検証した研究はないため「本当にそうだったのか」を確認する意義もあるという。
収穫量から社会を推測5年ほど継続予定
山形大の白石さんによると、舞岡公園周辺は谷戸であった可能性が高く、「谷戸の水田」を再現する目的で検証の場所に選定されたという。「当時の農具や方法を再現した稲作で、どれだけの収穫量が得られるのか。そこから労働力も見えてくるし、さらにそれによってどれくらいの規模のコミュニティーがあったのかという手がかりにもなる」と今回の検証の目的について語る。
田んぼの面積は6メートル×6・5メートルほど。これを分割して、弥生時代と古墳時代の農具を使い分けることで比較するという。舞岡公園の古民家施設などを管理するNPO「舞岡・やとひと未来」のメンバーが作業を手伝い、実際に昔の農具を使うと「思ったより使い勝手はいい」と感想を話していた。作業に必要な時間なども計測して比較していた。
市の担当者によると「この場所は50〜60年間にわたってアシが生い茂っていたけれど、今回耕したことで動植物の多様性にも影響している。市内では珍しいトンボなどの生き物もすでに観察できるようになった」と驚きを語った。
弥生土器での調理も
この田んぼでは今後、秋に石包丁を使った収穫実験や、収穫した米を弥生土器を使って調理する試みも予定している。白石さんは「少なくとも5年くらいは継続して調べていく必要があると思う」と話した。
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