そそり立つ高さ6・7mの半円形の壁に向かって2本の板で加速し衝突せんばかりの勢いで、飛ぶ。宙を舞いながらアクロバティックな技を見せる、フリースキー・ハーフパイプ。
同競技で、戸塚区出身の高橋佳汰選手が注目を集めている。「何よりも楽しい。毎日スキーのことを考えてます」
身長159cm。「『世界一小さいスキー選手』です」と笑顔で話す姿には自信が満ち溢れている。ニュージーランドで9月6日(金)に行われる同競技のW杯に向け、鍛錬を重ねる毎日だ。
”カッコよさ”追求
ハーフパイプはジャンプの高さや技の難度などを競うスポーツ。「だけど、一番大事なのは”カッコよさ”」と高橋選手。審査員や観衆をどれだけ惹きつけるかも、大会で勝敗を分ける。
それゆえ、リスクを承知であえて難易度の高い技に挑戦することも。「上達し続けて終わりがないのが、おもしろい」。上昇志向を保ち続ける精神力も、スキーで鍛えられてきた。
3度の怪我を経て
雪のない戸塚区で育った高橋選手にとって、スキーはもともと家族の冬の恒例行事だった。8歳から滑りの正確性を競う「基礎スキー」を始め、10歳でジャンプ台に挑戦したことをきっかけに、「フリースキー」に興味を持った。冬は北の大地で、夏は屋内スキー場で自由に飛ぶことに没頭。15歳の時、競技が正式種目に採用されたソチ五輪を見て以来、「オリンピック出場」の夢に挑み続けている。
挫折も経験した。2018年冬、平昌五輪出場を目前に前十字靭帯断裂。21年、22年にも同様の怪我で大会出場を断念した。怪我をすると次のシーズンまでのブランクが長く、競技人生を退く選手が多いという。
しかし、3度の怪我を経ても高橋選手はあきらめなかった。「やっぱり楽しいから。家族や地元の応援に応えたい」と不屈の精神で語る。
ラストチャンス
1度目の怪我の後、リハビリの期間中に地元・戸塚区の大洋建設(株)に就職。現在は選手として活躍する傍ら、広報担当として働いている。
高橋選手のもう一つの目標は、フリースキーの普及と選手育成。リハビリ期間中、昨夏は同社の支えを受け、埼玉県で子ども向けのフリースキー教室を開催。今年上旬には、若手スキーヤーのための模擬大会に自身が講師となって協力。着実に目標達成してきた。
今回のW杯が復帰戦であると同時に「身体の負担を考えると、ラストチャンスかも」と語る。W杯の結果は、2026年のミラノ冬季五輪出場権に直結する。「やり切る気持ちで、挑みます」。雪原に熱い闘志が燃える。
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