「侍―均衡と緊張の美」をテーマにドイツ・ベルリンで写真展を開く 坂本 貴光さん 吉田町在住 33歳
写すものすべてが作品
○…ベルリンで個展を開催するきっかけは、昨年世界8都市で作品を発表した際に、現地のギャラリーから声をかけられたことだった。テーマは「侍―均衡と緊張の美」。刀を構え、張りつめた空気が感じられる「静」と、髪を振り乱して刀で切るダイナミックな「動」の瞬間を写真に収めた。「刀を抜いているときが武士の一番輝くとき。一瞬、そこに命をかける武士の美学に魅せられた」
○…およそ3千枚の中から厳選したのは、「ゾクっとする瞬間」にとらえた12枚だ。写真のモデルは、武道と伝統芸能、音楽などを組み合わせた芸術を国内外で披露する「武楽座」の源光士郎さん。4年前、オフィシャルカメラマンとして参加したフィレンツェでの日本映画祭で出会ったという。撮影に使った装束は色鮮やかなものだが、「他の人に真似できない領域に」と作品をオリジナルのカラーで、より自分らしく表現した。
○…趣味は子育て。2歳の娘の話になると、落ち着いた写真家の顔から一転、父の顔に。娘の成長を写真に収めることは「ライフワーク」。笑顔はもちろん、泣き顔やぼーっとした表情など、シャッターチャンスは無限だ。みなとみらいのカメラ店の壁一面に140枚もの娘の写真を展示したこともある。「フェイスブックにも娘のファンがいる」と笑みをこぼす。
○…73年続く坂本写真スタジオの3代目。スタジオが遊び場、カメラはおもちゃ代わりで直感的に使い方を憶えていった。とは言え、父から返ってくるのは厳しい意見ばかり。「今でもけちょんけちょんに言われますよ。褒められるのは珍しい。気持ち悪いくらい」と笑う。常に意識するのは自分が写真家であること。写すものすべてが作品だ。「証明写真もそう。大きく引き伸ばして飾ってくれる人もいますよ」。芸術家のアトリエでもあるスタジオで、一枚一枚が代々受け継がれるような「作品」となるよう、今日も被写体に向かう。
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