枯死したことにより、先月、県から天然記念物の指定を解除された柏尾町の「益田家のモチノキ(注)」。8月6日に伐採されたが、実は柏尾地区連合町内会(齋藤純一会長)と戸塚区役所が連携し、2年前に同木の枝を採取。銘木などのクローン増殖を行う研究機関に依頼しており、その内の4本が元気に育っている。地元では「里帰り」を待ち望む声が上がっている。
2017年2月、当時同地を所有していた関係者により「モチノキ」の2本の内の1本の1部が無断で伐採される事件が発生。伐採者は県文化財保護条例違反の疑いにより、書類送検されている。
同月、県は樹木医を派遣し、状況を確認させたところ、倒木の危険が高いことから、やむを得ず切りかけた1部を伐採している。
翌3月、所有者の関係者から県に対し、樹木の健康状態が悪く強風等による倒木の危険性が高いとの理由から、すべての伐採許可を求める「現状変更等許可申請書」が提出された。これを受け、県は改めて樹木医に診断を要請。その時点では直ちに倒木につながるものではないとしつつも、上部5m程度を切り詰めることは有効との意見が出されたことを踏まえ、許可を出していた。
その後、所有者から生育環境の悪化や周囲への安全対策の観点から、移植の意向が示される。これを受け県は、専門家の意見聴取を実施。結果、18年に敷地内の移植を許可し、移し替えをしている。しかし樹木の状態は悪化の一途を辿り、樹木医は今年6月、完全に枯死しており、回復の見込みがないと診断。これを受け先月、天然記念物の指定が解除された。
早期の「里帰り」を希望
こうした経緯の中、数百年にわたり地域のシンボルの役割を果たしてきたモチノキが枯死する恐れがあると感じた同地区連合町内会の齋藤会長は、県や区に何とか存続させる方法がないか相談をしていた。それを受け、区職員は巨樹・銘木などの遺伝資源のクローン増殖を行っている、「森林研究・整備機構 森林総合研究所林木育種センター」(茨城県)に地権者の了解を得ながら17年に3回にわたり数10本の枝を採取し、研究所に送っていた。その中で現在4本が順調に育っており、20cm程度まで枝を伸ばしているという。地元に「里帰り」するものと、研究所に資料として残ることになるものもあると想定されている。
区担当者は「区役所は地域住民と気持ちを共感することを重要と位置付けている。樹木になるまでどれくらい時間がかかるか今のところ分からないが、慎重に見守っていきたい」と語る。
齋藤会長は「関係機関の協力でここまで何とか形になった。柏尾小に隣接する県有地が将来、横浜市に移管される。私たちはその場への移植を希望している。折しも来年は連合町内会創立30周年の節目。地元住民としては、記念イベントを行うセレモニーで里帰りしたクローンを披露できれば本当に嬉しい。いずれにしても歴史あるモチノキの子孫を残すことができて胸をなでおろしている」と笑顔を見せている。
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