区内在住で舞岡高校の第3期生の杉本武さん(61)は、親しかった”友人”を高校3年の夏に海難事故で亡くしている。この経験をもとに先ごろドキュメンタリー映画を制作した。作品に感銘を受けた同校の小坂茂生校長は、外部公開を快諾。下記二次元コードから先行公開している(7月7日(金)一般公開)。
「ホントに明るい少年でした」――。今は亡き友人の紹介から始まる本編は約38分。43年前の8ミリフィルムの映像とともに、AIナレーションによって制作経緯が語られる。
映画では、アメフト部で活躍していた生前の友人や、舞岡高校のイベントで盛り上がる生徒の様子が多数挿入され、当時の活力に満ちた学校生活が鮮明に映し出されている。また、大人になって再度集結したかつての仲間や友人の話を通じて、杉本さんがたどってきた人生なども描かれる。
作品名は「Soul Order 『白い蹉跌』が歌になるまで」。8ミリフィルムの中で亡き友人が叫んだ「青春」への思いを映画にすることで、「今を生きる若者たちに友人の魂を伝えたい」という杉本さんの思いが込められている。
高3の夏、友人の死
1978年に同校に入学した杉本さんは、映画研究部に所属。高3の初夏、自主制作映画「白い蹉跌」の撮影に取り組んでいた。内容は、大人たちに対する若者特有の反発心を描きながら、生と死を考える青春物語。
一方で友人は、アメフト部に所属しながら杉本さんとともにバンド活動をするなど、明るく活動的な人物だった。友人は仲の良かった杉本さんに誘われ、映画に出演することに。作品内ではバイク事故で亡くなってしまう生徒役を担った。
友人のセリフには、惰性で生きる大人に対して「早死にしてもいいから、生きてるって実感を味わいたいね」というものがある。熱演を鑑賞した生徒の中には涙を流す人もいたという。
映画が完成した1か月後、偶然にも友人は出かけた先で恋人とともに、海難事故に遭い亡くなってしまう。
「彼に作らされた」
杉本さんは昨年還暦を迎え「これまでの人生の整理がしたい」という思いから、亡き友人の姿を映したドキュメンタリー映画の制作を始めた。
劇中歌「白い蹉跌2020」の弾き語りを披露するのは、シンガーソングライターの大光寺圭さん。杉本さんとは、これまでも何度か共同で楽曲制作を行っている。
同曲は映画制作よりも前に、杉本さんが友人の死への思いを昇華するために作詞作曲を試みていたもの。3年前に再度書き起こされ大光寺さんの歌唱でCD化された。
一方、小坂校長は今年5月、杉本さんから送られたこの映画を見て驚いたという。36年前、同校で教師生活を始めた小坂校長は、事故当時にアメフト部の顧問だった教諭から、亡くなったその人物のことを聞いていたからだ。
小坂校長は「創立50周年を控えた今、学校の歴史もわかる貴重な映像。また、当時の生徒の活動的な様子やその熱量を今の生徒たちにも伝えたい」と映画を視聴した後、杉本さんに直接連絡し公開を快諾した。
杉本さんは「振り返ると、彼の死が私自身の人生のいろんな出会いや出来事につながっている。映画は彼に作らされたようなものだ」と制作までの道のりを語った。
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