自身が最期を迎える時、どんな医療やケアを望むのか、前もって家族や医療者と話し合い共有する「人生会議」。西横浜国際総合病院(汲沢町)は、その意思決定に至る理由までを共有することで提供する医療の質を高めようと独自の「ノート」を作成。11月から運用を始めた。
同院の在宅医療センターでは、在宅療養支援病院として年間約80件の看取りを行っている。10年程前から在宅医療の開始時に、回復を見込めない状態になった際に本人や家族がどんな医療を望むかを示す「リビング・ウィル(生前意思表明)」の書面を活用し療養の方針を決定していた。しかし、その意思に至るまでの患者の人生観や生死観にふれる機会は少なく、一刻を争う中では深く考える時間がないまま、治療を進めざるを得ない現状があった。
そこで昨秋から三瓶建二院長主導でソーシャルワーカーや看護師ら5人でチームを組み、指針策定を開始。今春からノートの作成に着手した。
4ステップで深掘り
ノートでは、人生会議を「大切にしていること」「誰に話したいか」「価値観を理解して欲しい人と共有する」「医療者に伝える」の4ステップを提示。それぞれ何故その考えに至ったか理由を書く欄があり、何度も書き直せるように欄を広く設けている。ノートは患者のほか全職員にも配布し、記入に取り組んだ。作成に携わった緩和ケア認定看護師の石井裕美さんは「書いてみると結構悩む。残される人のことも考えられた」と振り返る。理由を深掘りすることで患者の人生に触れ、「本人や家族の後悔の念が少なくなるように、医療者として最善を考えられる。いい物が出来た」と自信を見せた。
近しい人と対話を
三瓶院長は「亡くなるまでどう生きたいのか、何をしたくないのか、ノートと対話することからはじめ、近しい人と考えたことなどを話してもらえたら」とコメント。自身が記載した内容も公開している。ノートはA4サイズ4ページの要約版とB5サイズ16ページの詳細版があり、同院総合受付で配布しているほか、ウェブサイトからもダウンロードできる。
人生会議は、アドバンス・ケア・プランニングの愛称として2018年に厚生労働省が公表。きょう11月30日を「いい看取り・看取られ」にかけて「人生会議の日」としている。横浜市でも「もしも手帳」の配布や、短編ドラマ制作などで啓発を進めている。
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