横浜市は旧耐震基準で建築された住宅の耐震化を推進するため、大規模地震時に倒壊・崩壊の恐れがある旧耐震木造居住者宅への戸別訪問を2月から開始した。市内約10万戸を直接訪問し、耐震診断や補助金制度などの説明を進め、災害に強いまち作りを目指す。
木造10万戸対象に
熊本地震の建築物被害などを分析する調査委員会の報告によると、被害が大きかった益城町中心部で倒壊・崩壊した建築物310棟のうち、297棟が木造。約7割の214棟が1981年5月以前の旧耐震基準の建築物だった。
市は熊本地震による旧耐震木造住宅の甚大な被害を重く受け止め、今回の戸別訪問に踏み切った。木造以外を含む旧耐震基準の住宅は2016年3月時点で市内に約32万戸あり、国が示す住宅・土地統計調査などから、約18万戸を耐震性が低いと推計。戸別訪問はこのうちの木造に限った10万戸を対象に実施。居住者に耐震改修工事における市の補助制度や無料の耐震診断の説明、チラシ配布等を行う。訪問は市職員のほか、市が委託した事業者、それに市と協定を結んだ設計・施工事業者など約100社が6月頃までに順次行う。
改修補助金増額へ
旧耐震木造住宅の耐震改修を促進する市の補助制度は99年に始まり、これまでの累計申請件数は3千件以上。東日本大震災直後の11年度、12年度は補助金の増額などもあり、500件を超えたが、15年度と16年度は20件前後まで減少した。
市建築局によると、補助金を活用して実施された耐震改修工事費の平均は300万円〜350万円。築35年以上の住宅は70歳を超える居住者も多く、高額な工事費用などが理由で耐震改修に踏み切れないケースもあり、熊本地震後も申請件数に変化がないという。
市は17年度予算案の中で旧耐震木造住宅の耐震改修補助の限度額を30万円増額し、105万円とした。また、崩壊した建物に押しつぶされることを防ぐ防災ベッドや耐震シェルター等の設置促進事業に前年比約3倍の2千万円程度を計上。比較的安価でできる対策を促すなどし、災害に強いまち作りの底上げを図る。
同局担当者は「これまでの広報だけでは(耐震化が)伸びにくいという中での戸別訪問。補助制度増額もあり、力を入れて行う最後の啓発のチャンスという覚悟でやっていく」と話す。
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