ヨーロッパで大人気を博した 椿事(珍事)と「ツバキ」の関係 日本自然保護協会自然観察指導員金子昇(富岡西在住)
花の少ない冬に咲く大輪の花といえば「ツバキ」ですね。17世紀頃、この美しい花を見た西欧人は大変気に入り、その後ヨーロッパへ移入され、当時ヨーロッパ中で大人気になったといいます。南ヨーロッパを除くヨーロッパ大陸の常緑樹は、針葉樹が主でしたので、ツバキのように冬になっても葉が広く光沢があり、しかも大きな美しい花をさかせる植物は、大きな魅力だったのでしょう。歌劇「椿姫」もこうしたところから大ヒットしたのかもしれません。
また珍しい出来事(珍事)によく「椿事」という字を当てます。これは昔、中国に「大椿」という霊木があり、古い文献に「8千年をもって春となし、8千年を秋となす」と記述されていました。ここから「大椿」は「長寿の木」とされ、「椿寿」とも呼ばれました。大椿は大変珍しい霊木であるため、「椿」の音読みの「チン」が「珍」に通じることから、珍しい出来事に「椿事」が使われるようになりました。
さて、ツバキは暖かい地方の沿岸に近い山林に多く野生しています。この野生種を「ヤブツバキ」といい、これをさまざまに品種改良したものが園芸種のツバキです。
金沢区内では、公園、街路樹、庭木の他、日当たりのよい山林で見ることができますが、その大部分は植栽種またはそれが逸出し、野生化したものが多く、自生種のヤブツバキは少ないようです。
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