季節の花【8】 「ナンバンギセル」 万葉集では「思い草」 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
「道の辺の尾花が下(もと)の思い草 今さらになぞ物か思はむ」(万葉集)――道端の尾花(ススキ)の下の陰にある思い草のように、あなただけを思っているのに、今さら何を思い迷うことがあるでしょうか。――「忍ぶ恋」を象徴した歌です。ここでいう「思い草」とは「ナンバンギセル」のことで、うつむいている様子が、あたかも物思いにふけっているように見えることから、この名がつけられました。
江戸時代に入ると、多くの外国人が日本を訪れるようになり、中にはパイプをくわえて煙草を吸っている人もいたことでしょう。パイプを始めて見た日本人は、従来からの「思い草」をこのパイプに見立てて、「南蛮煙管」(ナンバンギセル)と呼ぶようになりました。当時はハイカラな名前ということで人気があり、今日まで呼ばれていますが、今は死語となっている万葉時代の「思い草」の方が、ロマンを感じる人も多いかと思います。
ナンバンギセルは、葉緑素を持たないので、自分で光合成をすることができず、ススキやスゲの仲間、時にはミョウガ等の根に寄生し、そこから横取りした栄養分で生きている植物です。また花の奥には、多量の粘液がたまっており、触れるとヌルヌルし糸を引くので、「ヨダレクサ」と呼ぶ地方もあります。
区内では夏の終わり頃から、金沢自然公園、金沢市民の森等で見ることができます。
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