当選確実が報じられ、取材に応じる山中氏(22日、午後8時過ぎ)
任期満了に伴う横浜市長選挙が8月22日に投開票され、無所属で新人の元横浜市大教授、山中竹春氏(48)=立憲民主党推薦=が約50万票を得て初当選した。過去最多の8人が立候補する中、自民党と公明党が中心に支援した小此木八郎氏(56)や4選を目指した現職の林文子氏(75)らを破り、12年ぶりの市長交代となった。山中氏は争点の一つだった統合型リゾート(IR)誘致に反対しており、市の方針が転換される。投票率は49・05%で前回を11・84ポイント上回った。
市長選は、林氏が誘致を決めたIRの是非や新型コロナへの対応策などが争点となった。
山中氏は14年に市大医学部教授に就任。データを根拠に意思決定する「データサイエンス」の手法を専門にしていた。
選挙戦は推薦した立憲民主党が主導して展開。同党のほか、共産党も応援に入った。「データに基づく政策」を主張し、IR反対のほか、敬老パスの自己負担ゼロや中学生までの医療費ゼロなどを掲げた。さらに、コロナ抗体の研究経験からワクチン接種の24時間体制整備や迅速化を訴えた。
「市民と向き合う」
当選確実が報じられ、中区の開票センターで支援者に山中氏は「市民一人ひとりと向き合いながら、素晴らしい横浜市を作りたい」と語った。IRについては「誘致を行わないという宣言を早期に出し、その上で必要な手続きに入る」とした。
山中氏に約18万票差で敗れた小此木氏は「当選後、IR反対を翻意するのではという市民の疑念を払しょくできなかった」と語り、今後の選挙にも出ないとした。林氏は「市民にIRを理解してもらうには時間がなかった」と悔やんだ。
元長野県知事の田中康夫氏(65)は「横浜を共に変えようという市民の心意気を感じた」、元神奈川県知事の松沢成文氏(63)は「横浜再生に向けた政策を市民に届け切れなかった」、元衆議院議員の福田峰之氏(57)は「若い層にも支持を得たが、広く伝え切れなかった」、元横浜市議の太田正孝氏(75)は「敗軍の将兵語らず」とし、水産仲卸業の坪倉良和氏(70)は「一市民レベルが立候補できる選挙を提示できた」と語った。
投票率は金沢区52・05%、磯子区50・17%。前回を各10・94、12・08ポイント上回った。