家庭や福祉施設からの暴行や暴言など、何らかの虐待を受けた障害者が2013年度、市内で37件あったことが県の発表で分かった。年間を通じた調査は今回が初めて。虐待が閉鎖的空間で行われやすい環境などから全容を把握するには難しい一面も残している。
これは12年10月に施行された障害者虐待防止法(以下、防止法)に基づき、市と県がまとめたもの。厚生労働省が実施した全国の調査発表にあわせ、県内市町村分が集計された。これまで防止法施行から13年3月までの6カ月の実態が発表された経緯がある。
人口が最も多い横浜市は、通報や届出、相談件数が491件で、このうち虐待と認定されたのが37件。県内では153件が虐待と認定された。市内の内訳は、家族や親族など養護者による虐待が27件で全体の7割を超え、施設従事者による虐待も7件報告された。県は「横浜市で通報件数が多いのは障害者虐待の周知が進み、制度そのものが浸透してきているのが一因なのでは」と分析する。
オープン化も対策の一つ
虐待は殴る、蹴るなどの身体的虐待や、言葉や態度で相手に苦痛を与える心理的虐待が多く、このほかに、性的虐待、放棄・放任(ネグレクト)、経済的虐待などに分類される。
今回、虐待の被害状況が明らかになったとはいえ、実態を把握するにはいくつかのハードルがある。虐待そのものが家庭や施設など、閉鎖的な空間で起こりやすいという性質上、被害者が虐待を訴えることも、認識することもできないケースが多いからだ。
この点について、横浜弁護士会の高齢者・障害者の権利に関する委員会委員長の内嶋順一弁護士は「公表された被害者数は氷山の一角。あくまでも待って集計した数で実態を把握することは難しい」と指摘。防止法では虐待に気づいた人の通報が義務付けられているが、一方で、虐待の未然防止や早期発見に対する体制作りも求められる。内嶋弁護士は「地域住民が施設を利用するなど、外部の目が行き届く風通しの良い環境を作ることも対策のひとつ」と付け加える。
今回の調査結果は次年度以降、件数増減を判断する目安になるという。市は「支援や指導を行いながら地道に啓発活動を続け、件数削減につなげたい」と話している。
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