ピンチをチャンスに新たな都市づくり 意見広告 成長へV字回復! 横浜市会議員 山本たかし
新型コロナウイルスとの闘いは、5月25日の緊急事態宣言解除によって落ち着きを取り戻し、「新たな日常」に向かって市民のくらしがリスタートしました。経済や市民生活に大きな爪痕を残しましたが、得られた課題を「教訓」とし、今後起こりうる様々なリスクに備えなければなりません。
危機をチャンスに変えてきた横浜
新型コロナはパンデミック(世界的大流行)となりましたが、交通や情報が発達し、人の移動が自由にできる現代のボーダレス社会では、こうしたリスクが常に存在しています。「ノー・リスク」はありえず、「リスクのコントロール」が求められます。
1859年(安政6年)に開港した横浜は、欧米からの開国を迫られた幕府が開港場と指定したことにより今日の発展の歴史がスタートしました。開港というリスクを受け入れた横浜が、近代化のチャンスを得たのです。わが国最大の国際港湾都市横浜は、「進取の気性」をもち、変化を恐れない都市として発展し続けた先人の気概を忘れてはならないのです。
市民の健康と命守る医療を
欧米の新型コロナの感染拡大は、きわめて深刻で、生活習慣や風習の違いから濃厚接触者による急激な感染が拡大。そして医療機器及び医療従事者の不足など「医療崩壊」を招きました。わが国も同じような危機感を共有しましたが、国民の協力と医療従事者の方々の昼夜分かたぬ献身的な努力により、そうした危機は回避されています。
神奈川県では重症、中等症、軽症患者別に医療機関を指定する「神奈川モデル」をつくり、PCR検査から入院治療に至る検査・医療体制を構築しましたが、軽症、無症状者への入院対応などいくつかの課題が残りました。
超高齢社会の医療介護の充実に向け、横浜市独自の医療施策や必要とする医療資源(病院・医療介護人材)の育成確保の課題が山積しています。今後、新たな医療リスクの発生を想定した危機管理のありかた等、横浜が責任と権限をもつことができる仕組みをあらためて国へ要望します。
市内経済の脆弱性
5月の月例経済報告で、「経済は新型コロナの影響による急速な悪化が続いており、極めて厳しい状況が続いている」と政府発表があり、中小・小規模事業者で成り立つ横浜市経済へのダメージは顕著にあらわれています。97万人の非正規雇用労働者の雇用が減少し、特に観光サービス業で働く女性の大半が非正規雇用であることから、観光MICE産業の先行き不透明感は市内経済の大きな不安材料です。横浜商工会議所によれば、5月の会員企業からの相談件数は1500件を超え、公的支援がなければ存続が危ぶまれる企業が多いと危機感を募らせています。支店をもつ大企業もリセッション(景気後退)の影響をうけ業績見通し予測がたたず、新規採用や設備投資の抑制など事業規模の縮小が国内マーケットに負のスパイラルを引き起こしています。
開かれた技術革新で新ビジネスを創造
今春から導入された5G(第5世代通信)は、4Gに続く次世代通信技術であり、自動車の自動運転化やドローン活用による災害救助支援、人手不足問題を解消するスマート農業、過疎地における医療格差を解消する遠隔診療など、未来の『安全・安心・快適』なくらしを実現することが期待されます。小中学校でのオンライン教育にも活かされます。5Gになれば、あらゆるモノにAIやIoTが実装され、時間や仕事、生活そして人の価値観にも変化が生まれ、新しいビジネスが生まれます。こうしたイノベーション(技術革新)はチャンスです。過去の成功事例にとらわれていては、時代の変化に取り残されます。「進取の気性」をもつ横浜に企業や人が集まり、交流を通じてオープン・イノベーションが生まれ、新たな都市を創造します。
横浜のIRは『第二の開港』
「進取の気性」に富む都市として発展してきた横浜ですが、近年、都市としてのプレゼンス(存在意義)が低下しているといわれます。わくわくドキドキとした横浜の魅力はどこに行ったのでしょうか。象徴的なのが、「IR(統合型リゾート)」に関する議論です。世界200カ国のうち127カ国が、OECD加盟国のうち30カ国が合法化しています。観光立国を目指すわが国は一昨年にIR整備法を成立させ、横浜市も誘致の準備をすすめています。IR整備法は、『魅力的な滞在型観光を実現し、地域経済の拡大、社会への還元』という目的をもっています。新型コロナが世界のIRに莫大な経営損失を与えましたが、だからといってIRが持続可能でない事業とどうしていえるのでしょうか。世界のIRは、地元企業とのパートナーシップを築き、1万人を超える雇用を生み出し、国際会議や滞在型ツーリズムを振興させ経済を潤し、イノベーションとクリエイティブ企業とのハブ機能となり、ベンチャー企業を支援するエコシステムとなり、地球環境を改善し、市民の生活の質(QOL)を向上させました。まさに魅力的なイノベーションIRなのです。
現在、大阪府・市と横浜市、長崎県(沖縄県・山口県含むオール九州)と和歌山県が誘致検討を進めていますが、横浜におけるIRの議論は非常に偏っていることを残念に思います。ギャンブル中毒や依存症などのデメリットばかりが誇張され、「横浜イノベーションIRのメリットや経済効果」「横浜にとってチャンスとなりうるのか」「横浜にIRを誘致されないとなったら、その損失分を何で補うか」「その不作為の責任をだれがとるのか」などの議論が不足しているのではないでしょうか。IRはカジノではありません。東アジアにおけるグローバル都市をめざす横浜の壮大な戦略なのです。
大胆な市債発行で横浜のV字回復を
国の第二次補正予算が決まりました。事業規模は117兆円と過去最大です。横浜市でも6月23日から市会第2回定例会が始まり第二次補正予算をつくる重要な議会となります。市内経済を支える中小・小規模事業者のため緊急かつ効果的な成立執行が求められます。
加えて横浜の未来をつくる「イノベーション予算」が必要です。横浜市は、財政の健全化施策として「横浜方式プライマリーバランス(PB)」を中期計画期間の4か年通期で均衡確保するという財政目標があります。この「横浜方式PB」により市債発行を抑制し、令和元年度末では一般会計に対応する借入金残高は3兆1875億円の見込みとなっています。しかし、企業・雇用を回復させ、新たな成長を創るためには、「横浜方式PB」の枠にとらわれない大胆な市債発行が必要です。「ピンチをチャンスに」横浜を開いたハマッコの気概を市政が示すときです。
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