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横浜「注目の人」インタビュー 女優・五大路子さん「横浜は宝の宝庫、もっと掘り下げたい」 舞台生活50周年、横浜夢座25周年

公開:2024年9月13日

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「お倉」を演じる五大さん
「お倉」を演じる五大さん

 横浜市港北区出身の女優・五大路子さんが企画・主演を務める舞台「富貴楼(ふうきろう)お倉〜花のように、風のように、海のように〜横濱から日本を動かした女」が2024年9月13日から16日まで、KAAT神奈川芸術劇場=中区山下町=で上演される。五大さんが横浜から演劇を発信したいと立ち上げた「横浜夢座」の25周年、舞台生活50周年を記念した公演となる。今回の作品や横浜への思いを聞いた。(取材=2024年8月)

 ――これまで横浜の歴史の中ではスポットライトが当たることが少なかった「お倉」を演じようと思ったのはどうしてですか。

 「2009年の横浜開港150周年の時に記念事業の一環として大さん橋ホールで演じていました。横浜夢座の25周年、舞台生活50周年の節目に大きな場所でやってみたいと思ったからです」

まずはお墓参りから

 ――今回の公演へ向けて、どのように準備をしてきましたか。

 「まずは今から1年半前に、西区赤門町の東福寺にあるお倉のお墓参りから始めました。どの作品でも自分の足で舞台となるまちを歩いていて、今回もお倉がいたころの横浜駅、現在の桜木町駅周辺などを歩きました。そのころの横浜を想像しながら歩いてみると、開港当時の香りが残っていて、100年以上の歴史がパッと縮まる感じがします」

 ――お倉は1871(明治4)年に現在の相生町で料亭「富貴楼」を開き、伊藤博文や大隈重信といった要人が集まる場所として重要な役割を果たしていました。お倉はどのような存在だったのでしょうか。

 「困っている人がいれば助ける、身を挺してでも頑張るという人だったのではないでしょうか。自分が動き、この国を動かそうとしていました。当時、女性が物を言うのは命がけでしたので」

 ――今回の舞台ではどのようなところに注目してほしいですか。

 「開港し、世界に扉を開いた時、まちの人が何を思い、何を夢見てチャレンジしたのか。歴史を感じ、生きた人を感じ、当時の横浜にタイムスリップした気分で観てほしいです」

横浜から世界に演劇を発信

 ――舞台生活50周年を迎えます。演劇との出会いを教えて下さい。

 「神奈川区の神奈川学園中学の2年生の時に演劇部に入り、高校2年生の時、県立青少年センターで行われていた演劇講習会に参加したのが原点です。その時から『横浜から世界に演劇を発信したい』と夢を抱くようになりました」

 ――「横浜夢座」はどのような思いで作られたのでしょうか。

 「ある日、群馬県で行われた講演会に招かれ、町の人が作ったお芝居を見ました。それは地元の学校の先生が脚本を手掛け、出演者も全員町の人。主人公がタイムスリップするストーリーで、何百年も前から伝えられている踊りと太鼓を使った伝統芸能も加わったもので、エネルギーを感じました。横浜でこういうことができないかと考え、多くの方にアドバイスをいただきながら、『横浜夢座実行委員会』を作り、公募で市民の参加を募って、プロの役者と一緒に舞台に立ってもらうようにしました。そうして、1999年12月に旗揚げ公演『横濱行進曲』を上演しました。そこから2018年まで14回の公演を行ってきました。その後、コロナ禍で予定していた舞台の中止が続きましたが、やっぱり夢を持ち続けたいと考え、夢座が25年の節目を迎えるのに合わせ、『お倉』を上演することになりました」

横浜に「磁力」感じる

 ――ひとり芝居「横浜ローザ」で伊勢佐木町などに立ち続けた娼婦「メリーさん」を演じるなど、横浜の歴史を題材にした作品を多く手掛けていますが、五大さんにとって横浜はどんな場所でしょうか。

 「私は東京の大劇場での舞台も踏んできましたが、横浜にはいろいろなものを引き付ける『磁力』を感じます。これまで、生まれ育った港北区にあった篠原城や鶴見区の花月園、戸塚区のドリームランド、鎌倉時代に活躍し、旭区二俣川で最期を遂げた畠山重忠に関する作品も上演してきました。中区や西区だけが横浜ではありません。いろんな夢を持った人がいて、宝の宝庫、ワクワクするまちです。もっともっと横浜を掘り下げていきたいと思っています」

 ――50周年を迎え、これまでの活動を振り返り、節目となったのはどのような出来事でしょうか。

 「19歳の時、劇団の練習で行っていた空中回転で失敗し、頸椎を損傷する大けがを負いました。病院のベッドの上で『一生、体が動かなくなったらどうしよう』と思う中、そばに生けられていた一輪の花を見て『生きたい』と感じました。その後、25歳でNHK朝の連続テレビ小説『いちばん星』でヒロインを務め、環境が一変しました。この2つは大きな転機となりました」

「横浜ローザ」をエジンバラで

 ――今後の活動や目標について教えて下さい。

 「金太郎飴のように誰がやっても同じではなく、私の命、眼差しから演劇を発信したいと思っています。横浜で多くの方とつながることができました。つながった方と夢を共有し、横浜にある宝を世界に発信していきたいです。夢は仲間がいてこそ叶うもの。夢を見続けられることが幸せです。まだまだ夢の途中。いつか、『横浜ローザ』をイギリスのエジンバラ舞台芸術祭で上演する夢に向かって続けていきます」

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