港南区役所と港南図書館は11日、「作家 荻野アンナ氏講演 本と私 読んで書いて60年」を港南公会堂で開催し、約400人が参加した。
荻野アンナさんは横浜出身のフランス文学研究者で慶応義塾大学名誉教授。また、1991年に『背負い水』で芥川賞を受賞した小説家でもある。さらに、両親の介護や、自身のがんとの闘病生活を経験し、辛い境遇の中でも笑いを忘れない生活などについても発信している。
今回の講演では主に、荻野さんの研究分野であるフランスの風刺小説家、フランソワ・ラブレーについて語られた。
まず荻野さんはラブレーとの出会いについて回想。厳しい校風のカトリック校から、自由な雰囲気のあるプロテスタントの学校へ転校したことが「笑い」に目覚めさ風刺小説作家に興味を持つきっかけになったと話した。
さらに、フランス留学中に愛読した坂口安吾がきっかけとなり、「坂口安吾批評」から文芸界進出につながったエピソードなども披露。時折ジョークを混ぜながらの講演で会場を湧かせた。
また、終演後には著作のたたき売り会も開催。「過去に街中で著作のたたき売りをやったことがある」と話す通りの軽妙な売り文句を連発。用意された10冊を数十秒で売り切った。その後、写真撮影やサインの要望などにも応じ、参加者を最後まで楽しませた。
本が人生を豊かに
港南図書館の担当者は講演の開催意図について「どんな状況でも笑いを忘れずに幅広い領域で活躍している人の講演は聞く人にエネルギーを与える」と説明。荻野さんは研究や作家活動の他に、落語家の第11代金原亭馬生さんに弟子入りし金原亭駒ん奈として高座に上がった経験を持つほど、笑いに造詣の深い人物だ。
また同講演が「港南区読書活動推進講演会」と銘打たれていることにも触れ「本を楽しむ、想像の世界に入り込むことは人生を豊かにする」とも話した。
終演後の参加者からは好意的な声が聞かれたといい、今後も区民の読書活動を推進するような取り組みをしていくとしている。
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