住友電気工業株式会社(本社・大阪府大阪市)が2026年3月に栄区田谷町にある横浜製作所(岩井圭子所長)内にデータセンター(※)内で使われる光通信ケーブルの改良を行う新研究所を竣工、同年7月頃の稼働を計画していることが分かった。AI(人工知能)の発達でデータ通信量が増大する社会情勢に対応するための研究を行っていく。
同社が研究を加速させる背景には文章作成などが可能な「ChatGPT」に代表される生成AIの台頭がある。高度で膨大な情報処理を求められる技術が発達することに伴い、データセンターの強化は課題の一つ。同社は従来より研究を重ねてきた光通信の技術を生かし、この課題に対応していきたい思いがある。
同社の新研究所建設プロジェクトの統括を行う足立徹光通信研究所企画業務部部長によると新たに建設される研究所は3階建てと平屋建ての2棟からなり、総延べ床面積は5500平方メートル。60人から70人ほどが配置されるという。同社が同製作所内に研究所を建設するのは25年ぶりとなる。
相反する概念両立
「データ通信量を増大化させ、多くの情報を処理しつつ、省エネルギー化を図るという相反する概念を実現するための研究」。新研究所で行う取り組みをそう表現したのは、同社光通信研究所所長の服部知之さん。具体的にはデータセンター内で使われる光通信ケーブルの改良を行う。
従来データセンター内で使われていたデータの通信方法は電気信号による方法だった。ところが、電気信号の場合だと、通信できるデータ量に限界があり、より多くのデータを処理しようとすると消費電力も多くなるという課題がある。
そこで、この問題を解決するために一部では光による通信「光ファイバー」を利用した方法が用いられている。この手法の場合、電気による通信に比べより多くのデータ処理が可能になり、消費電力も抑えられる。だが、極めて精密な接続をしなければ光が漏れてしまうなど、技術的課題があるのが現状だ。
そこで、同社は新研究所で機器同士の接続部品の研究を行い、より精度の高い製品の開発を目指していく。成果が商品化された際は北米の大規模データセンターに導入されることを想定しているという。
温度変化でも影響
同製作所内北地区に建設される新研究所の建物は地盤沈下の影響を受けない設計で、繊細な温度管理などにも対応。服部さんは「光通信では10ミクロン(10万分の1メートル)単位の作業が必要となる。気温変化や建物の傾きがあってはいけない。現在は既存の施設で研究を行っているが、今すぐにでも新研究所を使いたい気持ち」と話した。また、光通信がデータセンターに導入されることで電気通信よりも消費電力が少なくなることにも触れ、「データセンター全体の省エネルギー化は、接続部品のみによってもたらされるわけではなく、多くの部品の改良によって成し遂げられる。しかし、その一部として貢献ができればうれしいし、データ通信量の増大化と省エネルギー化の両立につながる研究に携わることはワクワクする」としている。
今後、栄区から世界の最先端技術に関わる大きな研究成果が上がることが期待される。
※データセンターとは
インターネットサーバーやデータ通信などの装置を集約して設置するための建物。内部では大規模、大容量のデータ処理が行われている。
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