中区寿町にある「寿公園」がこの程、整備工事を終えてリニューアルした。その公園整備を通して見えた寿地区で活動する各団体の想いを取材した。
日本3大ドヤ(簡易宿泊所)街の一つとして知られる寿地区。「寿公園」は1967年に、同地区の中心に開園した。周辺の簡易宿泊所で暮らす人の憩いの場であり、毎週金曜日には炊き出しに利用され、近くの保育園の運動会などにも使われてきた。
行政・地域・大学が連携
横浜市が進める公園整備の中で一昨年から二年がかりで同公園の整備計画が進められてきた。その計画を中心となって進めてきたのが、アート活動によって町を活性化させようと各種イベントなどを行っている寿地区のボランティア団体「寿オルタナティブネットワーク」(佐藤真理子代表)だ。同団体がコーディネーターとなり、地元の公園利用者らから意見を募るワークショップなどを開催し、神奈川大学工学部の研究室がデザインした。
昨年度から実施されていた第二期工事が完了し、4月8日に新生・寿公園のオープニングセレモニーが行われた。第一期工事(公園北側)で重点的に取り組まれた、炊き出し時に利用しやすいオブジェを設置。第二期工事(公園南側)では、子ども達がボール遊びの音を気にしないで遊べるように、壁に防音マットを取り付けたり、黒板のようにチョークで絵が描けるようになるなど、通常の公園とは一味違う、ユニークな公園となった。
”違和感”抱く住人も
一方で、完成した公園に複雑な想いを抱く人もいる。「オブジェなど意図を聞けば理解は出来るが、結果として子ども達が伸び伸びと遊ぶ姿がイメージできない公園になってしまった」と語るのは、寿公園の向いのビルに入る「ことぶき学童保育」の指導員・石井淳一さん。第一期工事終了後、公園整備計画に対する反対のビラを貼った。「学童と寿公園は、まさに学校とそのグランドみたいな関係。しかし、第一期工事の際、今回の整備についての何の説明もなかった」と残念そうに話す。
第二期工事のワークショップの際には声がかかり、他の地域団体などと一緒に参加して、公園づくりについて案や要望を出すなどしてきた。「子どもたちは大人が思ってもいないような遊びを生み出す。楽しく利用してくれれば」と子ども達の創造力には期待を込め「私達の主張も一部取り入れてもらったことは一定の成果だとは思う」としながらも、スタート時のボタンの掛け違いなどに納得がいかないようだった。
地域活動の難しさ
近年では高齢者や生活保護受給者が増え、かつての”労働者の街”から、”福祉の街”へと変化している寿地区。NPOなど地域の活性化や高齢者支援を行っている新しい団体も増えている中、同地区で長年根付いた活動をしている団体とのコミュニケーションの不一致が起こるケースも多いという。
寿オルタナティブネットワークでは「一期工事では説明が足りない部分があったと自分たちでも感じ、二期では多くの声を生かせるように、何度も案を練り直してきた」と振り返る。しかし「まだまだ私たちはこの地域の新参者。地域の中でのPRはこれからの課題でもある。だからこそ長い目で活動をしていくつもり」と話していた。今後も公園の手直しのワークショップ等を開催予定という。
中区・西区・南区版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|