本牧 気まぐれ歴史散歩 【10】 葛飾北斎作・富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」と本牧
葛飾北斎作・富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」。ダイナミックな浪に向かって漕ぎ出す三艘の押送船、背景には美しい富士山と夕焼けになる西の空。北斎作品は、モネ、セザンヌをはじめとした絵画やティファニーなどの装飾工芸に多大な影響を与え、ジャポニズムと呼ばれました。中でも「神奈川沖浪裏」は世界で最も有名な絵画となりました。
ところで「神奈川沖浪裏」の舞台が『本牧』だと言われたら、驚く方がほとんどだと思います。大胆な構図でデフォルメされていますので、場所の特定は厳しいですが、本牧説を唱える学説が多いのも事実です。その根拠は多岐に渡りますが、この「賀奈川沖本杢之図」が根拠の1つとなっています。
この作品は北斎が「神奈川沖浪裏」を完成させる二十年以上前に間門から三之谷の海を描いたものと言われています。
また北斎が大胆な浪を描いた初期の作品としても知られ、北斎本人が本牧を神奈川沖と呼んでいること、当時は本牧沖の海が神奈川沖とも呼ばれていたことなども本牧説の理由に挙げられています。北斎はこの他にも本牧の海を描いた作品を残しています。
タウンニュースを片手に「北斎が本牧の海を描いていたんだ!」「この作品の崖は間門から三之谷あたりの崖なんだ!」と想像を膨らませながら、改めて本牧の崖を眺めて戴けたら幸いです。
次回は、根岸湾にあった三つの飛行場のお話をご紹介させていただきます。(文・横浜市八聖殿館長 相澤竜次)
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