中区寿町の人模様を描いた書籍『寿町のひとびと』が10月20日に発売された。ノンフィクション作家の山田清機さん(57)=茅ヶ崎市在住=が足掛け6年の取材を通してまとめた力作。山田さんは寿町について「心の幅を広げる可能性を持ったまち」と振り返った。
有隣堂本店で上位に
寿町とは石川町駅から徒歩5分ほどに位置する中区の寿地区といわれる0・1平方キロメートルにも満たないエリア。そこに約120軒の簡易宿泊所が密集し6500人前後が暮らしている。
同作品では、簡易宿泊所で暮らす人々から、その支援者たちを丁寧な取材を通して14話にまとめて紹介している。四六判(127mm×188mm)の368頁で朝日新聞出版から発売(1980円税込)。同出版社のPR誌に2016年9月から19年5月まで33回にわたり連載した内容を一冊にまとめた。有隣堂伊勢佐木町本店では、発売から3週連続で販売部数が上位3位以内になるなど注目を集めている。
14話の中には「寿生活館」や「寿共同保育」「山多屋酒店(現・ことぶき酒店)」などの名称で場所をイメージできるものから、「キマ語」「刑事」「お前は何者か」など、タイトルからは内容が推測ができない章まで様々だ。
始めは興味本位で
山田さんが寿町を訪れたのは2015年の1月。久里浜医療センターでの取材の帰りに編集者と興味本位で立ち寄ったのがきっかけだ。
入った店ではノミ行為が行われ、出された酒は薄められたと思われる味わい。「日本三大ドヤ街」の一つとして知られた寿町に衝撃を受けたという。
その後、寿町の住人を取材しようと足を運ぶようになり、寿町勤労者福祉協会(現・横浜市寿町健康福祉交流協会)に依頼し取材可能な人を紹介してもらった。
労働力の供給基地
1956年、進駐軍の接収が解除されたのちに「ドヤ街」が誕生した。山田さんは「ドヤとしての歴史は長くなく、この60年でまちの性格が激変してきた」と語る。
日雇い労働者が住み、港湾荷役や高度経済成長期の大型公共工事などに労働力を提供してきた歴史がある。そのような社会的背景も同作品には盛り込まれている。山田さんは「『非常識』なことが多いまちだが、どんな人でも受容できるまち。管理・効率化が進む現代にあって、このまちが存在する意味は小さくない」と話した。
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