災害時に自力での避難が困難な高齢者や障害者ら「災害時要援護者」の避難手順を予め決めておく「個別避難計画」の作成が全国的に進んでいないことが、内閣府と消防庁の調査でこのほど分かった。全国で作成を終えた自治体は1割未満。横浜市も福祉専門職との連携を図るが、ノウハウ不足などで時間を要し、作成は思うように進んでいない。
要援護者の避難について、中区の障害者団体の職員は「障害の程度や種別は多岐にわたり居住形態も混在。避難訓練や備蓄品の確保など最低限の対策はしているものの実際はどうなるか分からない」と実態を話す。
近年の風水害や震災の発生時、高齢者が犠牲になる割合が6割を超えることを背景に、国は2013年、要援護者の名簿作成を義務とした。さらに昨年5月の法改正で、個別避難計画の作成を自治体へ努力義務化。福祉専門職の参画などを加え、概ね5年以内(26年度まで)の完了を求めている。
現状は自助頼み
これを受け、市は要援護者の日頃の状況を把握している介護支援専門員や生活相談員ら福祉関係者との連携を図るため調整を開始。実効性のある計画作成の整備を急ぐ一方で、市健康福祉局の担当者は「要援護者数が多い都市であるが故の課題がある」と指摘する。
現在名簿に登録されている市内の要援護者は約17万人。国は早期に作成を進めるべく、ハザードマップ上の危険状況や要介護度・障害の重度、独居など居住形態で作成の優先度を設定するよう求めている。だが市は「名簿の情報だけで優先度を決められれば良いが、要介護度や居住形態は変わるもの。普段の本人の状態や周辺環境などを考慮できるよう検討する必要がある」と説明する。
今後は県外の都市部の先行事例を参考に計画作成を進めていく考え。作成の先には、支援者の確保や避難場所の整備など課題は山積している。同担当者は「防災アプリ『横浜市避難ナビ』や行動計画『マイ・タイムライン』を作成するなど個人でできるとことから始めてほしい」と話した。
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