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【Web限定記事】 「二人で書いた婚姻届が宝物」 パートナーシップ宣誓をした柳原麗菜さん

社会

公開:2023年12月7日

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昨年宣誓した柳原さん(左)とパートナー(厚木市提供)
昨年宣誓した柳原さん(左)とパートナー(厚木市提供)

 保険会社で働く柳原麗菜さん(35)は、2022年に厚木市でパートナーシップ宣誓を行ったペアの一人。パートナーの女性と宣誓書を前にペンを握った瞬間を「感慨深いものがあった」と振り返る。宣誓後に二人でささやかな祝杯をあげ、家族や友人からは続々と祝福のメッセージが。パートナーは勤務先から特別休暇が付与された。

 自宅には、二人で署名した婚姻届を額に入れて飾っている。婚姻届は夜間に庁舎に届けても、一人で提出しても受理される。一方で宣誓制度は開庁時間に二人で行く必要があり、職員の前での宣誓が必須だ。「宣誓したいが公にしたくない、と躊躇するペアも多いのでは」と柳原さんは思いをはせる。

 宣誓のメリットは、お互いの関係を証明できること。逆にこうした証明がなければ、病や事故で搬送され死に瀕しても、傍に行けないリスクがあった。また一部の金融機関では宣誓をもとにしたローン審査を受け付けている。今の二人の目標は、マイホームをもつことだ。

 一方で法律上の婚姻とは大きな差がある。配偶者として相続したり、子どもの共同親権を得ることは叶わない。また戸籍上の性別変更には生殖能力をなくす手術が必要で(※注)身体への大きな負担となり、費用も高額だ。だからこそ柳原さんは同性婚の必要性を語る。「大切な人を配偶者にする事で、誰かの迷惑になるのか、出生率が落ちてしまうのでしょうか」。立法に関わる人々、世の中の意識が変わることを願っている。

 柳原さんは女性として生まれたが、男性を自認している。小学生の頃から心と身体が一致しない違和感があり「まるでDVDのケースを開けたら、違うディスクが入っている感覚でした」。心のどこかで、大人になったら男か女かに分かれなければ、と思い詰めていたという。幸い中学高校時代は悩みを話せる友人に恵まれた。もし今、当時の自分に会えるのなら「そのままでいい、と言ってあげたい」。

 LGBTQという言葉が広まったが、柳原さんにとっては、異なるものがひとくくりにされた感がある。人の心や身体は、英文字で表現しきれない。当事者ゆえにその多様さを実感している。

※注...性同一性障害の人が戸籍を変えるためには、手術で生殖能力をなくす要件がある。最高裁は2023年10月25日、この要件を違憲、無効と判断した。今後の要件見直しが見込まれている。

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