数々の歴史小説を世に生みだした作家・吉川英治氏(1892―1962年)の文学碑が、園芸会社「横浜植木」=南区唐沢=の門壁に設置された。吉川氏は中区山元町で生まれ、幼少期を唐沢周辺で過ごしたとされる。命日である9月7日には同社で除幕式が行われ、建立に尽力した地域住民や関係者ら約40人が集い、完成を祝った。
吉川氏の代表作の一つ『宮本武蔵』の巌流島のシーンが描かれた文学碑は縦60センチ、横90センチ。吉川氏の略年譜や横浜で過ごしたこと、当時の横浜植木の構内建物案内図が記された。同社の創業は1890年。幼い吉川氏が敷地内を通って学校に通っていたという。渡邊秀一代表取締役会長は「(吉川氏が)この地で暮らしたことが、創作物に何らかの影響を与えていれば嬉しい」と話した。
製作・設置をしたのは「吉川英治友の会」。横浜にゆかりがある作家でありながら、吉川氏の痕跡が地域に何もなかったことから、地域住民ら有志が発足。昨年から活動を開始し、文学碑建立のための協力者や募金を募ってきた。
同会代表で近隣に住む作家の伊東潤さんは、「こんなに早く実現するとは思っていなかった」と喜ぶ。本が読まれなくなった現代、文学碑を建立する理由を「地域の人たちに忘れ去られてしまわないためにも必要だと思う」とした。
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